【兵庫発 輝く】三浦技研 本格派ゴルフクラブを一般に提供

 
数ミリ単位でゴルフクラブのヘッド部分を調整して顧客のニーズに応える三浦技研の製造現場=兵庫県市川町

 神戸市中心部から北西へ車を1時間ほど走らせ、兵庫県市川町の田園地帯に入ると「国産ゴルフクラブ発祥の地」の看板が見えてくる。昭和初期に鍛冶の技術を生かして国内で初めてゴルフのアイアンクラブを製造、量産した同町は、今なおゴルフクラブ製造業者が数多くある。クラブの打点部分「ヘッド」を製造する三浦技研は、数ミリ、数グラム単位で打点の角度や重さを調整する技術力で、国内外のゴルフ関係者やファンのニーズに応え続けている。

 プロうなる「神の手」

 15歳からゴルフクラブの製造に携わった三浦勝弘会長(76)が1977年に創業。「ヘッド」と持ち手部分の「グリップ」、その2つをつなぐ「シャフト」があるゴルフクラブで、最もプレーへの影響が大きいとされるのがヘッドだ。

 プレーヤーがクラブを握ったときの個人差を一人一人くみ取って形にできる勝弘会長の技術はゴルフ専門誌や関係者の間で評判となり、「神の手」と称された。次男の信栄社長(47)も「『人の言うことを形にするのが得意』が(勝弘会長の)口癖」と語る。

 90年代までに国内外の大手メーカーのOEM(相手先ブランドによる生産)で実績を広げ、世界のトッププロが使用。「マスターズ」や「全米オープン」といったメジャー大会で数多くの勝利を収めた選手も採用したことで知られる。

 しかし、2000年ごろから国内の景気低迷やゴルフクラブの製造拠点の中国移転が進む中でOEMの受注が激減した。

 個人別にヘッド紹介

 受注が減ったことで1994年に設立し、細々と続けていた自社ブランドの販売に注力したが、2010年に就任した信栄社長は「ものを作ることしか知らず、販売知識、経験が全くなかった」と当時の社内の雰囲気を振り返る。

 翌11年には東日本大震災もあり売り上げが伸び悩む中、「販売店に必死な姿勢を見せないといけない」と、信栄社長は自ら車を運転して13年から2年間で約500店を回った。

 それまで営業に訪れることがなかった販売店からは「製品の良さは認めるけど、会社の姿勢は認めない」などと辛辣(しんらつ)な言葉を浴びせられることもあった。しかし、粘りの営業を続けることで次第に関係改善が進んだ。

 自社ブランド「ミウラクラフトマンワールド」の商品を販売した14年には、顧客の好みに合わせたオーダメードのヘッドを作る「カスタム」サービスをスタート。創業40周年の17年には、スイングを電子解析してプレーヤーそれぞれに合うヘッドを紹介する全国にも数少ない施設「フィッティングスタジオ」を埼玉県にオープンさせた。いずれもプロ向けのサービスを一般に提供し、ファンの裾野拡大を狙っている。

 技術力を生かして他社の契約プロのクラブヘッドをアレンジする取り組みも始めた。今年のマスターズで優勝争いを演じたプロや、国内メジャーで優勝を果たしたプロにも技術協力している。

 「プロに提供してきた技術を一般にも明かしたことで再び他のメーカーが関心を持ち始めた」と信栄社長。「『ミウラ』ブランドが国内外のメジャーで勝つことで、方向性が間違っていなかったことを示したい」と真剣なまなざしで語る。(尾崎豪一)

【会社概要】三浦技研

 ▽本社=兵庫県市川町小谷257(0790・26・0773)

 ▽創業=1977年2月

 ▽資本金=1000万円

 ▽従業員=約30人

 ▽事業内容=ゴルフクラブの製造・販売