日本の議論

リブラは世界を変えるか 「国際送金など課題」「普及にハードル」 (1/4ページ)

 米交流サイト大手フェイスブックが発行を計画している暗号資産(仮想通貨)「リブラ」は、世界中の人々に安価な金融サービスを提供する可能性がある一方、犯罪に悪用されるリスクも懸念されている。リブラは“世界”をどう変えるのか。金融とITが融合した「フィンテック」を手掛けるジャパン・デジタル・デザインの楠正憲最高技術責任者(CTO)と京都大大学院の岩下直行教授に聞いた。(蕎麦谷里志)

 楠氏「国際送金など利点多い」

 --リブラで暮らしはどう変わるのか

 「これまでフェイスブックでは友達同士で自由にメッセージのやり取りができたが、お金も送れるようになる。しかも手数料は安く、国境を越えた送金も手軽にできればメリットは大きい。さらに、音楽やゲームなどのサービスが安価に提供される可能性もある。今はスマートフォンのプラットフォームを提供する(米IT企業の)グーグルやアップルが、コンテンツの提供者から3割程度の手数料を取って販売しているが、リブラを使った決済が普及し、コンテンツ提供者が直接販売できるルートが確立されれば競争原理がもたらされるかもしれない」

 --リブラは新興国などへの支援も目的に掲げている

 「日本人だと中高生でも銀行口座が簡単に作れるので、口座が作れないという状況はイメージしにくいが、銀行口座がなければお金をためておく場所がなく、他人への送金もできないし、インターネットでの買い物もできない。銀行口座を持たないことで失っているチャンスも多く、リブラはこうした人たちに金融サービスを提供する可能性をもっている」

 --課題やリスクを指摘する声も多い

 「マネーロンダリング(資金洗浄)対策をはじめ、課題がたくさんあるのは事実だ。どうクリアしていくか考えないといけない。ただ、『(仮想通貨の代表格である)ビットコイン』が出てきた段階でこうした課題は分かっていた。指摘されている一連の課題は27億人のユーザーがいるというスケールの大きさ以外は既に出ていた論点で、リブラによって惹起(じゃっき)された問題ではない。リブラが今後、普及することなく消滅したとしても、第2、第3のリブラのようなものは出てくると考えた方がいい」

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