【高論卓説】地銀生き残りの鍵は 機能強化へ異業種連携が不可欠
地方銀行の生き残りをかけた複数の戦略が動き出した。筆頭はSBIホールディングスの北尾吉孝社長が打ち出した「第4のメガバンク構想」。SBIが過半を出資して持ち株会社を設立し、そこに全国の地銀やベンチャーキャピタル、運用会社などが出資して協力関係を築く。持ち株会社は参加する地銀などの業務システムやフィンテックなどのインフラや資産運用の受託ほか、人材の供給、マネーロンダリングの対応など幅広い商品・サービスを提供する、いわば「プラットフォーム」と言っていい。(森岡英樹)
北尾氏は、「第4のメガバンク」のコンセプトは「社会課題解決型ビジネスモデル」であり、地方創生のためには地域金融機関の機能強化が欠かせないと説く。そのひな型は、「信用金庫業界の中央銀行といっていい『信金中央金庫』や農林系統金融機関の資産運用を一手に担う『農林中央金庫』のようなイメージではないだろうか」(地銀幹部)と受け止められている。
実はこの構想は、自民党の金融調査会「地域金融機関経営力強化プロジェクトチーム」の提言とオーバーラップしている。金融調査会の会長である山本幸三氏は、プロジェクトチームの提言について、「地銀も系統運用機関をつくるべきだ。地銀のトップたちに提言し、どう対応するか見ている段階だ」と指摘している。
「第4のメガバンク構想」には島根銀行と福島銀行が参加を決め、SBIグループが両行に出資、筆頭株主に躍り出る。「地銀10行くらいから(打診が)きている」(北尾氏)とされ、参加行の拡大が見込まれる。
2つ目の戦略的な動きは、経営再建中のスルガ銀行について、創業家がファミリー企業経由で保有している同行の全ての株式(13%強)を家電販売大手のノジマが取得することだ。ノジマは既にスルガ銀の5%弱の株式を保有しており、今回の追加取得で保有比率は18%強に上がり、筆頭株主に躍り出ることになる。
さらにノジマは出資比率を高めたり、役員を派遣したりしてスルガ銀を持ち分法適用会社にすることも視野に入れているとされる。事業会社が銀行を買収する新たな局面に入る可能性もあり、波紋を広げそうだ。
そして3つ目の動きは、最も特筆に値する戦略とみているが、奈良県を地盤とする南都銀行がゆうちょ銀行のグループ企業である日本郵便と連携したことだ。
連携の柱は2つ。まず「郵便局への共同窓口の設置」だ。南都銀の店舗のない地域の郵便局内に、「日本ATM(現金自動預払機)」(中野裕社長)のシステムを活用し、顧客の住所や氏名の変更、通帳繰り越しなどの手続きを受け付ける共同窓口を設置する。もう一つは「郵便局へのATMの設置」で、南都銀の店舗がない地域の郵便局内に、同行のATMを設置し、現金の入出金取引や通帳記帳などのサービスを提供するという。同じ郵便局の中に、ゆうちょ銀と南都銀が同居する格好になるわけだ。
地銀とゆうちょ銀はいわば商売敵。その敵とあえて手を組んで共存共栄を模索することは、他の地銀にも影響を与えずにはおかないだろう。これら3つの生き残りをかけた戦略に共通しているのは、「異業種」との連携にある。既存の銀行の枠にとらわれていたのでは将来は危ういということであろう。
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【プロフィル】森岡英樹
もりおか・ひでき ジャーナリスト。早大卒。経済紙記者、米国のコンサルタント会社アドバイザー、埼玉県芸術文化振興財団常務理事を経て2004年に独立。福岡県出身。
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