2019年11月1日、渋谷駅前にオープンした「渋谷スクランブルスクエア」。地上230m、地上47階建ての超高層ビルが建ったこの場所に、東急百貨店東横店東館と東急東横線渋谷駅があった時の光景を覚えているだろうか。地下鉄副都心線との相互直通運転開始に伴う東横線地下化から始まった渋谷駅の再開発は、地下鉄銀座線ホームとJR埼京線ホームの移設という大きなヤマ場を迎えようとしている。
積み重ねてきた「分かりにくさ」
渋谷駅は1885年の山手線開通と同時に開設された。明治末から大正期にかけて路面電車が、昭和に入って東横線、井の頭線、地下鉄銀座線が相次いで開業し、郊外と都心をつなぐ結節点としての役割が確立された。
戦後の渋谷は三大副都心の一角として、東急グループの本拠地として、また若者の街として発展を遂げることになる。1977年に東急新玉川線(当時)、1978年に地下鉄半蔵門線、1996年にJR埼京線、2008年に地下鉄副都心線が開業し、ターミナルとしての機能が強化された反面、新たなホームが平面的、立体的に継ぎ足されていった結果、渋谷駅は「迷宮化」していく。
今回の工事は、渋谷駅が100年分積み重ねてきた「分かりにくさ」を抜本的に解決する大手術になる。その象徴と言えるのが銀座線ホームと、JR埼京線ホームの移設による、乗り換え動線の改善である。
まず銀座線は2019年12月28日始発から2020年1月2日終電まで、渋谷~表参道間、青山一丁目~溜池山王間を6日間連続で運休し、明治通り上、渋谷ヒカリエと渋谷スクランブルスクエアの間にホームを移設する。
これにより、東急線、JR線から銀座線への乗り換えが大幅に変わる。カギとなるのは、渋谷スクランブルスクエアや渋谷ヒカリエに整備された、立体的歩行者動線「アーバンコア」だ。銀座線から東急線東横線・地下鉄副都心線、東急田園都市線・地下鉄半蔵門線まで、エスカレーターとエレベーターで縦に接続される。
乗り換え時間を大幅短縮
JRとの乗り換えも大きく変わる。銀座線は現在、ホームと改札が乗車用・降車用で分かれているが、ホーム移設によりひとつに統合される。現在、JR中央改札から銀座線に乗り換えるには、いったん階段を降りて玉川改札の前を通り、再び階段を上る必要がある。しかし今後はJR中央改札右手にある通路を進めば銀座線新ホームにたどり着く。同じルートで乗車と降車ができるというのも分かりやすくなるポイントだろう。
続いて2020年春、埼京線・湘南新宿ライン・成田エクスプレスなどが発着するホームが北に350m移設される。現在は山手線ホームと埼京線ホームは互い違いの関係で配置されており、乗り換えが非常に不便だが、両路線のホームが横並びになり、乗り換え時間が大幅に短縮される。
埼京線ホームの移設も、再開発事業によって実現した。埼京線ホームは山手線の横に土地の余裕がなかったため、南に大きくずれて設置された経緯があるが、埼京線の線路脇まで迫っていた東急百貨店東横店東館と東横線旧ホームを撤去したことで、ようやくホームを設置するスペースを確保できたのだ。
JRから銀座線の乗り換えは前述の通りだが、東急線東横線・地下鉄副都心線、東急田園都市線・地下鉄半蔵門線への乗り換えも、中央改札から渋谷スクランブルスクエア方面に進み、同ビル内のアーバンコアを経由するのが一番分かりやすいだろう。渋谷駅に慣れていない人は今後、JR中央改札を基準に乗り換えすることをおススメしたい。
とはいえ2013年に始まった工事はようやく中間地点に差し掛かるところ。今後、東急百貨店東横店西館・南館の解体、渋谷スクランブルスクエア第2期工事、山手線ホームの拡幅などが予定されており、全体の完了は2027年の見込みだ。その頃には地下、地上、連絡通路と複数の動線が整備される予定だが、それまでは通路の変更が何度も行われることになりそうだ。
【鉄道業界インサイド】は鉄道ライターの枝久保達也さんが鉄道業界の歩みや最新ニュース、問題点や将来の展望をビジネス視点から解説するコラムです。更新は原則第4木曜日。アーカイブはこちら