これに加え、電子書籍の世界規格が統一されたことも日本進出を後押しした。欧米で電子書籍の事実上の世界規格となっている「EPUB(イーパブ)」の最新版が縦書きの日本語に対応することになり、日本でキンドルが発売される際には、日本語を表示するためのフォントが内蔵されるとみられる。
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日本勢、「勝てる端末」開発急ぐ
一方、アマゾンを迎え撃つ形となる日本勢は「(アマゾン参入が実現するなら)日本の電子書籍市場の拡大につながる」(ソニー)と歓迎する声もあるが、「内心は危機感でいっぱい」(業界関係者)なのが実状だ。インプレスR&Dの試算によると、2010年の日本の電子書籍市場は約650億円とまだ小さい。すでにネット通販で強い顧客基盤を持つアマゾンの上陸で、競争が激化し、淘汰(とうた)が始まるのは必至の情勢だ。
日本市場を熟知した日本勢は、端末や配信サービスの使い勝手で差別化に挑む。
ソニーが20日発売した専用端末「リーダー」の新製品は、無線LANや携帯電話回線に接続し、外出先などで手軽に電子書籍が購入できるよう利便性を高めた。
また、大手書店の紀伊国屋書店が運営する「Book Web Plus」は20日から「アイフォーン」やアンドロイド端末のほか、「リーダー」にも電子書籍配信サービスを開始。凸版印刷とインテルが運営する配信サービス「BookLive!」はパソコンなどに加えアイフォーンへも対応端末を拡大。将来は流通や教育分野への進出も模索しているという。
野村総研主任コンサルタントの前原孝章氏は「キンドルとの競争に勝てる端末を生み出さないと先行きは厳しい」と指摘する。(古川有希)
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