“一針入魂”の吉田カバン 品質維持のため国内生産貫く

2012.4.4 05:00

吉田の吉田輝幸社長

吉田の吉田輝幸社長【拡大】

 吉田輝幸社長に聞く

 --カバンのトップブランドとして、国内生産を貫いている

 「日本製にこだわっているのは、作り手と商品を企画する側がより近くにいないと、いい商品ができないとの確信を得ているからだ。自動車や家電のような量産型ではなく、吉田カバンの場合は職人が手作りで一針ずつ縫っている。企画側にあったモノを作るためには、互いの距離が近い方がよい」

 --職人の技術継承が課題だ

 「国内のモノづくりを絶やしてはいけない。次の世代にいかにスムーズにバトンタッチしていくかが喫緊の課題だ。特定の職人に仕事が集中しないように、意識的に幅広く仕事を依頼している。極端に仕事が減ると辞めてしまう職人が出て、技術が途絶えてしまうからだ。職人の減少傾向が目立ってきた10年ぐらい前からこのような取り組みを進めている」

 --最近の消費動向をどうみる

 「東日本大震災や政治経済の混乱など消費者マインドにゆとりがなくなっており、力強さは感じない。一方で、品質面などで安心感のある定番回帰の流れがある。われわれの商品は定番品が多く、きちんとしたモノづくりが改めて評価されているのではないか。一過性の人気で終わらず、品質の良いものを提供することが生き残っていく道だ」

 --海外展開をどう進めるのか

 「現在、台湾と香港に計6店をフランチャイズ展開しているが、急速に店舗拡大や大型店を作るといった考えはない。現地仕様に適応した製品を作っているわけではないが、品質面では評価を得ている。内需縮小への対応も大きな課題だが、あくまで軸足は国内に置く考えだ」(川上朝栄)

【プロフィル】吉田輝幸 よしだ・てるゆき 慶大商卒、1969年カバンの製造・卸小売を手がける吉田に入社し、商品管理部配属。75年取締役、90年専務。2000年副社長、02年から現職。東京都出身。

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