ソニーとパナソニック、シャープはテレビ事業の不振で24年3月期に合計1兆3千億円もの最終赤字に沈む見通しだ。パナソニックはこれまでに3万人超の人員削減を進め、シャープも労働組合に5月からの賃金カットを提案した。
3社はいずれもテレビ事業への集中投資が裏目に出た共通項を持つ。太陽電池や医療など有望事業も抱えるが、すぐにテレビの穴を埋めるほどの収益性は期待できず、「リストラに走らざるを得なかった」(アナリスト)のが実情だ。
また、NECは1月、1万人規模の人員削減を発表した。かつて半導体やパソコンで世界を席巻したが、システム開発などで米IBMなどに後れをとった。3月期の売上高は3兆1千億円にとどまり、ピーク時より4割も減る縮小均衡。2年前に策定した「売上高4兆円」の経営目標も「無理だと思う」(遠藤信博社長)と悲観的だ。21年にも2万人を削減したばかりだが出口は見えない。
この10年間、日本企業が行ったリストラで多くの技術者がサムスン電子などの韓国企業に流出した。結果的に韓国エレクトロニクス産業は世界の頂点に立ち、次の覇権を狙う中国企業も「日本の技術者に照準を定めている」(業界関係者)という。その場しのぎのリストラを繰り返すだけでは、再び貴重な人材を失う危険性が高まりかねない。