福島第1原発事故を背景に、製紙メーカーなどによる放射性セシウムの除染素材の開発が進んでいる。セシウムを吸着する鉱物をシート状に加工するなどし、効率的な除染を可能にしている。紙の国内需要が低迷するなかで、地道に開発を進めてきた付加価値の高い技術が生かされることになる。
王子製紙グループの王子キノクロスは、セシウムを吸着しやすいゼオライトという鉱物粉末を不織布と不織布の間に層状に接着し、シート化する技術を開発した。不織布を作る同社独自の製造設備を流用できるため、「需要があればいつでも量産可能」(王子製紙)。同様な素材は、特種東海製紙も開発しており、このほどサンプル出荷を開始した。
雨が降ったあとの耕作地や学校の校庭などに一定期間敷き、水に溶けてイオン化した放射性セシウムを吸着し取り除く。不織布で挟まれたゼオライトは外に漏れたり飛散せず、2次的な汚染の可能性が少ない。
凸版印刷も紙にゼオライトを充填(じゅうてん)した新素材を開発中。ロールで保管できるため、新たに汚染が発覚したときなど、迅速な対応が可能になりそうだ。
三菱製紙は酸化鉄などの磁性粉末とゼオライトを一体化した吸着素材を開発した。放射性セシウムを含む廃液中に添加し、反応後に強い磁石で吸着素材を集めれば、フィルターなどを使わなくても廃液から放射性セシウムを取り除ける。同社はゼネコンなどと共同で、福島県で実験プラントを構築中で、放射能に汚染されたがれきの焼却灰処理などで、高い除染効果が期待される。
王子キノクロスのゼオライト不織布は、魚介類を生きたまま輸送する際の鮮度保持材として一部が製品化されている。三菱製紙の吸着剤は「レアメタルの回収材として研究していたもの」(同社)を応用した。これらの技術は、除染以外にも用途が広いため実用化への取り組みに力が入っている。(高山豊司)