【ビジネスアイコラム】
約2年の支局暮らしを経て5月に大阪経済部に戻ってみると、以前と別世界を思わせる風景が広がっていた。経済誌の特集や新聞の企画には「家電敗戦」「テレビなぜ負けた」などのタイトルが並び、かつて日本の経済と雇用を支えていたパナソニックやシャープなどの苦境を書き立てている。
少なくても2年前まで、堺市のシャープの液晶パネル工場や兵庫県尼崎市のプラズマテレビ用のパネル工場には関西経済の牽引(けんいん)役として期待が寄せられ、大阪湾はパネルベイともてはやされていた。それが今、ソニーを含めた家電3社は2012年3月期連結決算でそれぞれ過去最大の最終赤字を計上する事態に陥り、自前のパネル生産にこだわったテレビ事業への過剰投資が不振の原因だと戦犯扱いだ。
高い技術力を誇り、世界市場への戦略商品だった日本のテレビは、いつの間にか強みを失っていた。円高に加え、国内で地上デジタル放送移行に伴う特需がなくなったことが影響したのは間違いない。だが、安価なテレビを桁違いの規模で市場に投入する韓国メーカーとの過当競争で価格破壊が進んだ結果、「売れば売るほど赤字になる」(家電大手幹部)状態に成り下がってしまった。シャープの堺工場の稼働率は3割程度と低迷し、パナソニックの尼崎工場は一部生産停止に追い込まれた。