4日に発表されたヒッグス粒子の発見に使われた観測装置には、日本企業の先端技術が数多く採用された。とりわけ、心臓部ともいえる超電導磁石やセンサー技術などで日本企業の資材などが採用され、“世紀の発見”に大きく貢献した。
ヒッグス粒子の存在を確認する実験では「大型ハドロン衝突型加速器(LHC)」で陽子を光速近くまで加速して衝突させ、その際に飛び出す素粒子を検出器でとらえる。この陽子を加速したり方向付けするには、強力な磁石が必要だ。
LHCには2000台近い超電導磁石が設置され、装置の心臓部となっている。同磁石には膨大な量の超電導線材が用いられているが、その半分近くは古河電気工業が納入した。JFEスチールや東芝も超電導磁石用の鋼材やコイルを納入し、実験を支えた。
素粒子検出器の心臓部には、光電子増倍管などを使った浜松ホトニクスの光センサーが採用された。「LHC用に開発した特殊仕様」(同社)で、他にまねのできない高感度センサーだ。LHCの設置台数は合計2万6000台にも及ぶ。
クラレは検出部周辺で放射線などを測定する特殊プラスチックファイバーを提供。このファイバーは通信用に開発したが、コスト面などで普及しなかった。ただ、特殊な加工技術が測定に好都合であることが分かり、「思わぬところで役に立った」(同社)という。