海外で活躍の場が広がり始めたのは2011年ごろから。今ではアメリカやシンガポール、台湾などで単独ライブが開かれている。プロの作曲家も興味を持つようになり、昨年、音楽家の渋谷慶一郎さん(40)が初音ミク主演のオペラを制作。衣装はルイ・ヴィトンが担当し、11月には芸術の都、フランスのパリで上演される。
世界的シンセサイザー奏者で作曲家の冨田勲さん(81)は宮沢賢治の作品に影響を受けて作曲したオーケストラ曲「イーハトーヴ交響曲」の重要な場面を初音ミクに歌わせた。「神秘性を表現するにはミクの人間を超えた純粋性がぴったりだった」と話す。初音ミクについては、「きわめて日本的。日本では古来、文楽や人形浄瑠璃、からくり人形など人がこしらえたものに、操る人の魂を込めて表現してきた。その電子版。日本のお家芸と言ってもいい」と考える。
年齢も性別も国籍も問わない無数のクリエーターがミクを通じて自分を表現する。それはネットに乗って即時的に世界で共有される現代性を備える。今秋には楽器ソフトの入った新版と英語版が発売された。伊藤社長は「ミクは現代人が自己表現して自分を他者とつなげることができる媒体にもなっている」と話している。(安田奈緒美)