PET樹脂は再利用する度に、粘度が落ちていく。ペットボトルを頂点に、バンド、シート、衣料用短繊維と、再利用される製品の付加価値も粘度とともに落ちていく。使用済みのペットボトルを分子レベルまで分解して高粘度に再生する方法は以前からあったが、巨大な設備が必要でコスト面で見合わなかった。メカニカルリサイクルでは、回収したボトルを粉砕、洗浄した後、高温・真空状態で一定の処理を行う。
これにより、不純物を除去すると同時に、粘度を高められた。コスト面でも新品樹脂とほぼ同等。サントリーは再生樹脂のボトルを使う製品を、今後広げていく計画だ。「ペットボトルは、リサイクル可能な貴重な資源。国内で循環させたい」(協栄産業の幹部)
トヨタが8月に発売した高級車、新型「SAI」。車両の樹脂材において、樹脂リサイクル材と植物原料のプラスチックが20%試用されている。合計20%の使用技術確立は2015年の目標だったが、「2年前倒しで実現できたが、今回はリサイクル材を大幅に増やした。樹脂は資源」(トヨタ幹部)。トヨタは会社名を明かさないが、複数の中小企業が再生を担っている。「小回りが利き、技術力を持つ中小企業があるから実現できた」(同)という。
中小企業が大企業の仕事のやり方を学び、また大企業がこれを教えるのに、何かと時間やお金はかかるだろう。だが、双方に“気づき”は必ずある。何より、原油価格が高騰していくだけに、樹脂資源の国内循環は待ったなし。大企業と中小企業の協業は、新しい価値を生んでいく。(経済ジャーナリスト 永井隆)