HVやEV開発で日本車メーカーは現時点で世界をリード。このため、スマホなど小型のリチウム電池では韓国勢の強さが目立つが、車載用では日本勢に一日の長がある。「日本はこのチャンスを逃す手はない」というのが佐藤氏の強い思いだ。
車載用で韓国勢とのリードを広げるには、安全技術を高めることが一番。リチウム電池では、2006~07年にソニーや三洋電機(当時)が異常過熱などでリコールした経緯がある。その後、事故がなかったサムスンSDIがシェアを伸ばした。より高い安全性が求められる車載用でこうしたことを繰り返してはならない。
エスペックが新たに開設する施設では、最大2万4000アンペアという莫大(ぼうだい)な電流を一瞬のうちに流し、電池を強制的にショートさせる試験を可能とした。電池が発火や爆発しないか、過酷な試験でどのような現象を引き起こすかについて試験・評価できる「世界でも初めて」(佐藤氏)の機能と規模が目玉だ。
◆優位保つ連携プレー
佐藤氏はサムスンSDIに移る前、本田技術研究所で1990年からEV用の電池開発に従事。ニッケル水素電池よりも効率が高いリチウム電池の車載化の可能性を予測し99年には電池メーカーと開発プロジェクトを立ち上げた。しかし、有効性を立証しつつも結局日の目を見ないまま、2004年、エネルギー研究開発全般の陣頭指揮を任せるというサムスンSDIの誘いに応じた。そして日本に戻った今、今度こそ日本で車載用リチウム電池事業を成功に導きたいという思いも佐藤氏を駆り立てる。
「電池メーカーに加え、高い技術を持つ部材メーカーや装置メーカー、そして信頼性の高い試験・評価機関が、他国に頼らずにそろうのは日本だけだ。韓国もそこまでの強力な機能はない」と佐藤氏は分析。車載用リチウム電池では韓国勢だけでなく、中国勢などの追い上げも激しい。だが、各プレーヤーが連携してスピーディーな開発を進められれば、日の丸電池の「競争力復活シナリオが描ける」と意気込む。(那須慎一)