NHK会長の任命権を持つ経営委員会(定数12)の欠員2人が11日付で補充され、松本正之会長(69)の来年1月の任期切れを前に次期会長選考が本格化している。松本氏は13日、受信契約数が過去最高の3849万件に達し、受信料値下げにもかかわらず180億円の黒字を確保した中間決算を発表したが、それでも政財界から交代を求める声は根強い。松本氏が「低評価」を余儀なくされている理由はどこにあるのか。(三品貴志)
「これまでは11月後半に公表していたが、今年は少し頑張って、民間企業が発表する時期に公表した」
13日の会見で松本氏はこう述べて実績を強調した。NHKに中間決算を明らかにする法的義務はないが、松本氏が会長に就任した平成23年度から「視聴者へ説明責任を果たすため」として公開。ただ、今回の発表前倒しを「続投を希望する松本氏の危機感の表れ」とみるNHK幹部もいる。
関係者の話を総合すると、松本氏への批判は主に(1)NHK改革のスピードの遅さ(2)番組内容の偏向(3)国際放送の強化の遅れ-の3点に集約できそうだ。
JR東海副会長から転身した松本氏は、中期経営計画に受信料値下げを初めて盛り込み、昨年10月から実行。懸念された減収は営業活動強化による受信契約数の増加で予定を上回るペースで補填(ほてん)されている。さらに今春、職員の基本賃金を5年間で10%引き下げる給与制度改革にも着手した。
こうした“実績”の一方で、経営委員の一人は「松本氏は受信料値下げに消極的だった」と明かす。値下げは官房長官の菅義偉氏が総務相時代の19年にNHKに求め、当時の橋本元一会長から福地茂雄会長、そして松本氏に「10%値下げ」という宿題として引き継がれた。東日本大震災後に始まった経営計画策定で松本氏ら執行部は当初「4%値下げ」を提示。最終的に7%で決着した経緯がある。
前出の経営委員は「値下げの影響をカバーしつつあるのは、これまでのNHKのコスト体質が異常だったから」として、松本氏の改革の甘さを指摘する。
偏向については財界から「報道が反原発に偏っている」、政界から「歴史認識が自虐的」などの声が聞かれ、国際放送については経営計画の目玉だったにもかかわらず、「存在感がない」と経営委内で不満がくすぶる。松本氏の就任が民主党政権下だったことも、与党側の交代論の一因だ。
経営委は今回、会長選考手続きの内規を見直し、現会長と新人の複数人からの絞り込みを想定。関係者によると、3年前に作られた内規は現会長に有利で、現会長と新人を公平に評価する形に改めたという。
ある経営委員は「不祥事で辞めた海老沢勝二会長以降では、松本氏になってからは偏向も不祥事も目立たなくなった」と業績に理解を示す。ただ、10月にNHK放送技術研究所の職員が架空工事を発注していた不祥事が発覚。これも松本氏には痛手で、会長選考の風向きに影を落としそうだ。