【直球緩球】中国市場、したたかに取り込む アサヒグループHD社長・泉谷直木さん(65) 

2013.11.28 10:02

 --消費税率の引き上げ後をにらんだ事業戦略は

 「2つの視点で見ている。一つは『増税で価格が上がって消費が下がり、下手をすれば売上高も下がる』。もう一つは、アベノミクスが効果を上げている中で、賃上げがどうなるかの問題もあるが『確かに価格は上がるものの価値観が多様化する。それによって商品価格も多様化する』ということだ。それだけに(プレミアムや第3のビールなどの)ミックス戦略が非常に重要だ」

 --賃上げと設備投資にどう対応するのか

 「法人税が下がれば確かにプラスになる。だが、それが設備投資に回ったとしても、われわれが行うのは全て『効率化』の投資だ。生産性を上げれば雇用に対し、むしろマイナスに働く。今の供給力はビール市場に対して高すぎる。需要が高まって供給力とのギャップが逆転すれば、そこで雇用や賃金が動く。見極めが肝心だ」

 --高齢化や人口減はいや応なしに進んでいく

 「そこで、幅広い年齢層の健康生活を支えるグループ企業を目指したい。当社は長い間、大人を相手にアルコールの商売をしていたが、ベビーフードや高齢者向け食品といったそれぞれのニーズもある。舞台を広げればお客さまの数は増やせる」

 --中国食品最大手グループと粉ミルクなどを扱う合弁会社を近く設立する

 「小さな会社だが、アサヒが過半を出資する。1000億円単位の大きな出資額で始めると、中国側はマジョリティー(過半数)を渡さない。以前は大きく投資して工場を建ててという感じだったが、今後は小さく始めて成長を取り込みながら大きくする。取り込めなければ、やめてしまう。積極性は今までと変わらないが、よりしたたかにいく」

     ◇

 いずみや・なおき 昭和47年、京都産業大法学部卒業後、アサヒビール入社。広報部長、経営戦略本部長、東京支社長などを経て平成15年取締役、22年社長。アサヒグループの持ち株会社制移行に伴って23年7月から現職。京都府出身、65歳。(山沢義徳)

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