【21世紀を拓く 知の創造者たち】日産自動車

2014.3.5 05:00

木村健さん

木村健さん【拡大】

  • 鈴木拓さん
  • 武田裕也さん
  • 田村翼さん

 □スカイライン搭載の「ダイレクトアダプティブステアリング」

 ■運転のストレス解消し疲労軽減

 次世代の自動運転車を彷彿させる新技術が開発された。このほどスカイラインに搭載されたステアリング技術「ダイレクトアダプティブステアリング」は、ステアリング操作を従来の機械式の連結から電気信号に置き換え、タイヤ角度とハンドル角度、操舵力を独立して制御する画期的な技術。悪路でも快適な走行が可能だ。将来的にはハンドルからつながるシャフトも不要になり、ハンドルの位置は自由に決められるようになるという。この技術開発に携わった4人に語り合ってもらった。

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 <車両要素技術開発本部シャシー技術開発部>

 □木村健さん…安心の技術を磨く

  ▽きむら・たけし 走行制御システム先行開発グループ主担(1991年入社)

 □鈴木拓さん…事故をなくす車を

  ▽すずき・たく ステアリングシステム開発グループ(2003年入社)

 □武田裕也さん…他社にない技術で

  ▽たけだ・ゆうや 走行制御システム先行開発グループ(2004年入社)

 □田村翼さん…やり切った満足感

  ▽たむら・つばさ ステアリングシステム開発グループ(2007年入社)

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 --今回、開発した「ダイレクトアダプティブステアリング」のどの部分に携わっていたのですか

 木村 ステアリングシステム全体のとりまとめ役として、キチンと性能が発揮できるようにするのが私の業務です。これまでのステアリングはドライバーの意思を機械的に伝えていますが、新開発の技術は電気信号を用いることで、より操作性を向上させたのが最大の特徴です。3カ所に設置したECU(電子制御ユニット)が相互に監視し信頼性を高め、道路の状況を把握して最適な状態での走行を実現します。道路の凹凸は車が受け止め、タイヤの振動が直にハンドルへ伝わることを防ぎ、疲労感が軽減します。航空機などで使われている技術を初めて乗用車に搭載しました。開発期間は15年をかけています。

 鈴木 コンピューターの制御ソフトウエア開発に携わっています。繰り返しになりますが、今回のステアリングシステムの特徴は、ドライバーのハンドル操作を電気信号に変換し、モーターを動かしてタイヤの角度を変えていくこと。この時、タイヤ角度をどれだけにすればよいのか制御する必要があります。ここが機械式との大きな違いです。タイヤの角度はコンピューターで演算していくわけですが、その演算方法として最適なアルゴリズム(計算式)を開発するのが私の役割です。ステアリングシステムのコアとなる重要な部分です。

 武田 カメラで道路の状況を把握して、ダイレクトアダプティブステアリングを制御するアクティブレーンコントロールの開発です。高速走行時に車線(白線)に対する車両の向きをカメラで検知し、レーンと平行になるようにタイヤの角度とステアリングの操舵反力を微調整します。これにより横風や、傾斜など路面の影響に対する直進性が高まるので、修正操舵が減少します。長距離運転での疲労感が軽減できるメリットがあります。ハンドルとタイヤの調整もコンピューターで演算するわけですが、そのアルゴリズムを開発するのが主な業務です。将来の自動運転の開発に役立つ技術になると思います。

 田村 ECUの開発です。鈴木さん、武田さんが開発したソフトを確実に動かせるための脳みそ作りというイメージです。このコントロールユニットからの指令でモーターが動きタイヤ角度が変わっていきます。電子部品の数が多く、パートナー企業と連携しながら作り上げていきます。求められる機能から仕様を決め、それを実現するためのECUとはどのようなものになるのかを検討していきます。私たちの考えをパートナー企業に理解してもらい、逆に彼らのテクノロジーを理解することに多くの時間を割いてきました。今回の開発は挑戦的な技術だと思います。

 --開発に困難はつきものでしょうが、その中でも苦労したこと、課題と思えることがあれば教えてください

 木村 研究段階を経て先行開発に着手して10年。システム環境が何とかまとまり出したころ、搭載する車種を決める段階になってなかなか決められない状況が続きました。今回の新技術を取り入れていくことは社内でコンセンサスがあり、システムの良さも誰もがうなずくレベルでした。それでも各車の開発チームは尻込みしてしまう。あまりにも最先端であることとコスト高になるためです。技術的な課題も多かったのですが、それよりも社内を説得して歩いた印象が強く残っています。コスト低減は努力しており時間の問題だけです。

 鈴木 先行開発から量産化まで一貫して携わってきましたが、試作車で十分な性能を出せたことが商品化段階になると、うまくいかなくなることがあります。これは部品にバラつきがあるためです。多くの部品がつながってシステムが構築されていくので、ほんの小さな部品精度のバラツキが重なることで要求した性能が出なくなります。このような見えない不具合を議論しながら改善していくのは、これまで味わったことがない苦労でした。商品化への課題を乗り越えて市場投入できた喜びは、大きかったですね。

 武田 開発コンセプトにどのような新しい価値を見いだすのか、ここが一番苦労したことです。どういうものを作ればいいのか、形が見えないところからのスタートでしたから、お客さまがいいと思うものを目指しトライアンドエラーの連続。3年目ぐらいが最も苦しかったですね。とにかく最初は1人でしたので。その後、鈴木さんのサポートを得て議論を重ね、多くのブレークスルーが生まれました。厳しい状況でしたが、それでもやり遂げられたのは、他社にない技術を作り出す、という気持ちが強かったからだと思います。

 田村 ステアリングは安全走行に重要です。それを制御するソフトが確実に動くよう、絶対の信頼性と耐久性を確保することに神経を使いました。数えきれないほどの試験を重ね、これで大丈夫だと確信が持てたときは、ホッとしたと同時にやり切った満足感がありました。これほど素晴らしい技術を開発できた喜びの半面、社内外で共感を得ることの難しさも感じました。開発当初の苦しさや、会議室で朝まで議論したことなど、振り返ればいい思い出です。

 --将来を展望して、やってみたいこと、夢などを聞かせてください

 木村 今回の開発メリットは、機械的につながっている部分を減らす道筋を作ったこと。今後も部品点数の減少にもつなげ効率よい車作りを可能にする取り組みに力を入れていきたい。当社は2020年に自動運転車を出すと表明しており、それに大きく寄与できると考えています。機能的に優れた、乗って安心できる技術をより磨いていきたい。

 鈴木 事故をなくす車を開発したい。これが入社動機です。それにつながる自動運転に向けて全力を投入したい。そのためにも今回開発した技術をさらに発展させることが必要です。その先には絶対に事故を起こさない車を開発するのが私の夢であり、実現したい目標です。技術的に幅を広げる取り組みも意欲的に挑戦していきたいと考えています。

 武田 技術で人の安全に貢献していきたいという思いで入社しました。鈴木さんと同じ考え方で驚きました。操作を電子変換させていく開発に熱心に取り組んでいるメーカーは当社だけ。この技術的ノウハウで差別化し、他社より一歩も二歩も先を行くことに貢献したい。将来も技術屋として新しい開発にも挑戦していきたいと考えています。

 田村 革新的な技術を開発するのには10年、15年の期間がかかります。それを考えていくと次に関わる開発も同じぐらいの年数が必要になるでしょう。それを今回の開発で知りました。やはり現実的な夢として自動運転で走る自動車の開発に携わりたいですね。そして市場投入までしっかりと見届けていきたい。まだ、十分に間に合います。

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【会社概要】日産自動車

 ◇本社=神奈川県横浜市西区高島1-1-1

 ◇社長=カルロス・ゴーン氏

 ◇設立=1933年12月

 ◇売上高=連結9兆6296億円(2013年3月期)

 ◇事業内容=自動車、船舶の製造販売、関連事業

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 フジサンケイビジネスアイは「独創性を拓く 先端技術大賞表彰制度」を設けております。このシリーズは2013年の運営に協力いただきました協賛企業の研究開発活動を紹介するものです。

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