■身体の隅々まで0.1度単位で表面温度計測
三菱電機がエアコン「霧ケ峰」に、快適さと省エネを両立したエアコン「Zシリーズ」を導入した。特殊なセンサー「ムーブアイ極(きわみ)」で、手足の先の温度を測ると同時に、4枚の「フラップ」と呼ばれる羽根「匠(たくみ)フラップ」によって心地よい風を生み出す旗艦モデルだ。4月に誕生から60年の節目を迎えるのを前に、2013年度の「省エネ大賞」と「節電大賞」をダブルで受賞する快挙も成し遂げた。
◆赤外線センサー活用
霧ケ峰の最大の特徴といえば、本体中央に配置されたセンサー「ムーブアイ」だ。最新のZシリーズでは、「ムーブアイ極」としてバージョンアップ。赤外線センサーによって、身体の表面の熱をきめ細かく検知する優れものだ。
「衛星や監視カメラの画像解析技術など、三菱電機の東西の研究者の力を借りて進化してきたんですよ」。霧ケ峰のセンサーの秘密について、同社ルームエアコン製造部先行開発グループ主任の松本崇氏が教えてくれた。
他メーカーのエアコンのセンサーと一体何が違うのか。一般的なエアコンのセンサーは「焦電素子」と呼ばれ、人の動きを察知することで人の存在を認識する。計測するのも、エアコンが設置されている天井付近の温度であるために、温度ムラの原因となっていた。
これを解消しようと、約5年前に出てきたのが、身体の表面温度そのものを測るという発想だった。
霧ケ峰にセンサーが搭載されるようになったのは、1994年モデル以降。2001年モデルからは、今のムーブアイの原型ともいえる温度に相当した出力を検知する「サーモパイル」と呼ばれる種類のセンサーを搭載し、室温の正確な計測に力を注いできた。
ムーブアイと呼ばれるようになったのは、05年モデルからだ。よりきめ細かく温度をみるため、センサーに載せる素子を徐々に増やし、08年モデルでは8素子となっていた。
最新のムーブアイ極は縦方向に32の素子を積み上げ、身体の表面温度を体温計と同じ0.1度単位で測る。部屋の右から左、左から右へと、片道を40秒で計測する。
「周囲の温度と“引き算”して人の形を浮き上がらせることで、人間の存在を認識する」(松本氏)仕組みだ。西日が当たって温まりやすい壁など、空間全体の状況もきめ細かく分析してくれ、電力供給不安を背景に高まる省エネ志向にもマッチした。
ただ、素子数を8から32に増やすには、乗り越えないといけない壁もあった。
「素子を増やした分、センサーが大きくなってもおかしくない。でも、デザインを守るには、これ以上大きくはできなかった」。松本氏は振り返る。
素子の多さを優先するか、デザインを取るか。適正な販売価格の維持や発売時期との見合いもあった。
提携先の独センサー専業メーカーの技術陣との綱引きの結果、この独メーカーが手がける小さいチップを使うことで、32素子で折り合いをつけることになった。
直流モーターを使った高級扇風機に慣れた消費者を振り向かせようと、風の質にもこだわった。最新モデルでは初めて、ブランド名の由来となった長野県・霧ケ峰高原の風を実際に計測、再現したのだ。
◆300億通りのパターン
これを実現した技術が、匠フラップだ。ルームエアコン販売企画グループ主任の白井達也氏は「4枚のフラップがバラバラに動くことで、霧ケ峰高原にいるような全身で感じる心地よい風を再現できるようになった」と話す。
上下のフラップを絞ってピンポイントで狙いを定めて風を送ったり、左右のフラップを使い分けて、居間でくつろぐ人とキッチン内で料理中の人に同時に風を送ることもできる。そのパターンは300億通りを超えるという。
霧ケ峰を生産している静岡製作所(静岡市駿河区)では、消費税率引き上げ前の駆け込み需要も手伝って、連日フル回転している。夏のかき入れ時に向けて、4月1日の増税後も現在の前年比5割増産を続ける強気の計画だ。三菱電機が霧ケ峰の「最高峰」にかけた期待の高さが表れている。(米沢文)