その要因として、技術の伝承ができていない、知財戦略に乗り遅れている、国際規格標準化で力が発揮できていないなどの理由が過去から挙げられてきた。しかし、それより何より、エンジニア出身の責任者の見識の狭さと行動力が乏しくなっていることも、要因の一つとして大きいのではないだろうか。
ただ、ここでエンジニア出身の責任者の置かれた立場も弁明せざるを得ない。筆者もかつて経験済みだが、景気低迷で予算も削減され、新商品を出す場合にも、不具合を出さないこと、開発日程は厳守する、コスト・開発費は目標必達という中で、とても冒険できない時代が長く続いてきた。つまり萎縮する時代が続いてきたのである。
◆多様な知識が必須
一方、例えばクルマの世界を見てみると、グーグルによる自動運転、アップルによるiPhoneとカーナビを連動させた車向け音声操作サービス「カープレイ」、テスラモーターズによる5000億円規模のギガファクトリー構想など、新商品や新ビジネスの芽が生まれつつある。まさに、はっと気づいたら、周りの風景がかなり変わってしまっていた感がある。
一般の企業では、エンジニアとして入社したとしても、主任、課長、部長などと職位が上がるにつれ、技術領域のみ強くてもカバーできる領域は限られてしまう。むしろ、内部では人や組織との関係、外部では世の中の動向や、関連する他業界とのかかわり合いの中で、共同開発や新たなビジネスモデルなどを生み出していくことが必要なのではないか。