「数十秒のテレビCMで泣いたり笑ったり感動に乗せて、ブランドの想いをメッセージとして伝えるという従来の広告表現の手法は、何十年もの歴史の中で培われてきた本質的で強い領域。その領域にテクノロジーを取り入れて新しいやり方を見つけたいと思った」と振り返る。
インターナビの特設サイトで3Dグラフィックで走行を再現したコンテンツや、エンジン音を自分の車で楽しめるスマートフォン用アプリも提供した。
「4マス」対「デジタル」はなくなる
電通が2月に発表した資料によると、2013年の日本の広告費は5兆9762億円、前年比101.4%と2年連続で増加した。内訳をみると、テレビ・新聞・雑誌・ラジオのいわゆるマスコミ4媒体が100.1%増にとどまったのに対し、目を引いたのは衛星メディア関連(109.6%)、インターネット(108.1%)だった。今後、広告会社はどのように変わっていくのだろうか。
菅野さんは「4マス(マスコミ4媒体)という言葉が何年か後には(広告の)教育上はなくなるかもしれない。4マス対デジタルという構図ではなく、『これはネットがいい』『これは紙がいい』『これは電波じゃないか』というように両方をしなやかに使える若い人が増えてくる。それは何年も先の話ではない」と予想する。
「Sound of Honda / Ayrton Senna 1989」で自分の得意技を使って広告の王道ともいえる領域に挑み、結果を残した自身の今後の展開は? 「個人としての挑戦領域としていろいろやってみたいことはありますが、クライアントにとってこれが一番適正だと判断することをやります。またフィルムでやるかもしれないし、データの配布をするかもしれない。まぁ、どちらにしても僕の得意技は使ってやると思います」とうれしそうに笑う。
最後に出版の理由を語った菅野さん。「今年の新入社員に『プログラミングを勉強した方がよいですか』と聞かれた。しかし、みんな同じことをしても仕方がない。いまの時点では1円にもならないかも知れないけれど、自分の好きなことや得意なことをいくつも磨いて、他の誰も持っていない専門性の組み合わせにしてほしい。そのことを伝えたかった」と後輩たちにエールを送った。