「大工の言葉」で話す
経営学者のドラッカーは、ソクラテスの言葉を引用し、「大工と話すときは、大工の言葉を使え」と説いた。つまり、「コミュニケーションは、受け手の言葉を使わなければ成立しない。受け手の経験に基づいた言葉を使わなければならない」と。これは2000年以上を経た今でも何ら変わらないように思える。
このような話をすると、形だけまねて、「大工の言葉」を話そうとする人が出てくる。ところが、ドラマなどで地方の方言でしゃべるシーンが出てくるが、単に人から聞いた程度でしゃべると、地元の人はすぐに分かってしまうものだ。筆者も福井県出身なので、ドラマで福井のシーンをみると、単なるまねなのか、実際に地元に行き、練習して身に着けてきたものなのかすぐに分かる。体裁だけ繕ってもうまくいかない例だ。
さらに、技術経営(MOT=Management of Technology)的に言えば、コミュニケーションを取るために、職場間を動き回ることを、「マネジメント・バイ・ウオーキング・アラウンド(MBWA)」と呼んだりする。メールや電話でのやり取りのみならず、平たく言えば職場をうろつくだろうか。また、多様な領域(ディシプリン)間の意見を聞いて理解し、それを全体として調整しながら進める能力のことを「マルチ・ディシプリン」と呼ぶ。