今春、戦略会議での研究成果は実用化へ大きく歩み出した。福岡市と九大、三菱化工機、豊田通商が、下水処理場の汚泥を発酵させてバイオガスをつくり、ガスから水素とCO2を取り出して水素を燃料電池車に、CO2はハウス農業に活用する世界初のプロジェクトをスタートさせた。
福岡市内の下水処理場に水素製造施設が来春完成する予定で、水素ステーションもつくられる。施設が稼働すれば1日当たり3700立方メートルの水素を製造し、燃料電池車70台を満タンにできるという。
純国産エネルギーである水素の地産地消のモデルとなるだけに、福岡市の高島宗一郎市長は「革新的な取り組みの成果を、世界に発信したい」と意気込む。
九州は水素エネルギー供給拠点として発展する可能性を秘めている。年間5億立方メートルもの副生水素が出る製鉄所などが北九州に立地し、水分解による水素製造に必要な電気を生むメガソーラーや風力発電といった再生可能エネルギー施設が各地にある。九州電力の原発を再稼働させ、再生エネとの共存の道を探れば、電力供給、水素製造の効率は高まる。「水素アイランド九州」を目指し、九州版水素ロードマップを作成してもいい。福岡を中心に取り組んできた成果を各地で生かせば、九州は「水素社会」をいち早く実現できるはずだ。(産経新聞西部本部副本部長 遠藤一夫)