だが、技術的には大きな壁が立ちはだかっていた。アトッチはビルの窓ガラスの内側に、熱の放射を防ぐ金属膜を塗布したガラスを貼り付ける構造。2枚のガラスは約1センチの空気の層をつくって密閉し、外気温を室内に伝わりにくくすることで夏は涼しく冬は暖かい環境をつくる。
ただ、密閉が十分でないと空気層に余分な水分が入り込み、内部に結露が発生する恐れがある。工場で機械的に密閉できる新築用エコガラスと違い、アトッチはビル内で作業員の手で施工するため、正確に密閉を確保できるかどうかが大きな課題だった。
製品化を実現する社内のチェック項目のなかに「施工の均一性」があり、試行錯誤の日々が続いた。「アトッチを貼り付ける“押す力”をいかに管理するかばかり考えていた」(岡氏)
◆技術陣の「ひらめき」
そんなとき、2枚間の空気を減圧してガラス同士が近づく力を利用するという「技術陣のひらめき」が一気に製品化を引き寄せる。アトッチを窓ガラスに貼り付け後、機械で空気を減圧して一定の数値に保てているかを測り、空気が抜けていないかどうかを確認する。
このオリジナル手法の採用により、アトッチは内部結露に5年保証を付けて製品化。施工後は、1枚ガラスよりも断熱性が3.7倍に、日射による熱をさえぎる遮熱性も1.8倍にそれぞれ高まる。
省エネ対策には、窓ガラスにフィルムを張る手法があり、遮熱性を確保できるものの、断熱性ではアトッチが大幅に上回る。実際、縦横各15メートルの6階建てビルで年間のエネルギー使用量を比較すると、フィルムは1枚ガラスから2.7%の削減にとどまる一方、アトッチは32.4%減と大きく差がついた。
アトッチの好調について、岡氏は「快適性を犠牲にしないで省エネできるところが広く受け入れられた要因」と分析する。