1998年のトラベラーズとの大型統合を果たしたシティが、リーマン・ショック後に低迷しているのとは対照的に、ひたむきにリテール(個人向け業務)の強みを磨いてきたウェルズ・ファーゴの株価は、金融危機前から倍増の勢いだ。
りそなは「個人と中小企業に重きを置く」(東社長)方針のもと約600店を展開。休日営業拠点の開設をはじめとする取り組みは、スーパーの店頭に窓口を置くなどのリテールに力を入れてきたウェルズ・ファーゴの姿とも重なる。
3兆円を超えていたりそなHDが返済すべき公的資金は、現時点で1280億円を残すのみ。平成30年3月期までに返済する計画だが、「計画を前倒しする体力がある」(アナリスト)とされている。
今後は利益の使い道として、これまで優先させてきた公的資金返済から「投資にシフトしていく」(東社長)構えだ。ただ、投資は店舗強化といったリテールに重点を置く方向で、当面は積極的なM&Aに距離を置くとみられる。それでも金融界では「りそなが再編の“台風の目”になる」との声が絶えない。
「大手行では、信託機能を取り込みたい三井住友銀行や、資産運用で手を組む三井住友信託銀行が、りそなに秋波を送っている」(大手行幹部)とされる。
その三井住友信託銀を傘下に持つ三井住友トラスト・ホールディングスが27日、横浜銀行との業務提携を検討すると発表。「再編へ先手を打った」(地銀幹部)と業界に衝撃が走った。再編のマグマはいつ噴き出してもおかしくない。(塩原永久)