まずは専門書などを片っ端から読んだ。商品づくりにこだわりを持つ一方、ブランドとしての認知度をあげようと、直営店を全国でオープン。入社から4年で、11店舗を開店した。「お店を持つことで直接お客さんにブランドイメージを伝えていかなければ」という一心だった。
一方、04年には新ブランド「粋更kisara」を立ち上げる。「自分が欲しいもの」を扱おうと、「新しい日本の贈り物」というコンセプトで麻や陶器、漆などの伝統的な素材や技術を生かした生活雑貨商品を展開した。
だが、初めてゼロから立ち上げたブランドでは失敗も経験した。2年目までの売り上げは数百万円で、「3年やって芽が出なかったら諦めよう」(中川社長)と考えたが、3年目に表参道ヒルズに構えた直営店が突如注目を集め、「お店で世界観ができて初めて伝わる、と痛感した。コンセプトがいかに大事かを再認識した」。この経験が、会社にとっても一つの節目になった。
その後、「日本の土産もの」や「暮らしの道具」など、さまざまなコンセプトで次々と新ブランドを立ち上げ、現在は6ブランドを抱えるまでに成長した。07年、これまで社訓がなかった同社に、「日本の工芸を元気にする」と掲げた。各地の工芸製造会社との取引を通じ、廃業する会社の多さに「日本の伝統的な技や素材が失われてしまう」との危機感を抱いたためだ。