建物や山をも通り抜けるミュー粒子だが、核燃料に含まれるウランなど密度の高い物質を通り抜けると、進路が変わったり粒子の数が減少したりする。この原理を使い、同研究所は貨物コンテナ中の核物質を検知する装置を開発していた。だが、分厚いコンクリートや鋼鉄越しに原子炉内を透視するのは前例がない。
東芝原子力福島復旧・サイクル技術部の四柳端(よつやなぎ・ただす)部長は「原理は分かっていてもこれまで世になかった技術だ」と説明する。東芝は自社で所有する研究用原子炉で実証実験を行っており、来年度に福島第1原発に投入する予定だ。
◆大産業への可能性
福島第1原発で培った除染やデブリの取り出し、機器の遠隔操作などの技術は、世界の注目も高い。
米エネルギー省のウィリアム・マーチン元副長官は「新たに原発を導入しようとする国々は、福島の教訓と、日米の技術を必死になって求めている」と指摘した。
政府は6月にまとめた新成長戦略でも、原発を含めたインフラ輸出について、「迅速かつ着実に実施」と掲げた。新興国などでは原発の建設から運営、廃炉までをパッケージで求められるケースも予想される。
こうした中で、日本企業も動き始めた。
IHIは昨年、原発などの除染・解体技術を持つ米ナイトロシジョンを買収、廃炉事業に本格参入した。
また、日立は9月30日に、英国などに原子力研究開発拠点「欧州原子力研究センタ(ENRC)」を設立。欧州の廃炉技術やプラントの予防保全技術を取り入れ、安全で高効率な技術の開発を進める計画だ。
日本エネルギー経済研究所の豊田正和理事長は、福島第1原発での廃炉に伴う技術開発の意義をこう強調した。
「世界で廃炉が大きな産業になる可能性を持っている。日本が建設技術だけでなく、廃炉技術でも世界トップクラスになれるか。今がその転換期だ」