エンジニアや特に迅速な判断を求められる責任者にとってときに「朝令暮改」は必要だ【拡大】
◆言葉の意味が逆転
同様な考えは他にもあるのではと思っていたら、セブン&アイ・ホールディングス会長兼最高経営責任者(CEO)である鈴木敏文氏は『朝令暮改の発想』の中で次のように語っている。
「朝令暮改といえば、以前はネガティブな意味でとらえられました。一定の方向に向けて成長を続けているときは、前言を翻すと判断力や決断力のなさを非難されたものです。それがいまは、一度言ったことでも環境が変化し、通用しなくなれば、すぐに訂正して新しい方針を示さなければ、変化に取り残されてしまいます。朝令暮改を躊躇(ちゅうちょ)なくできることが優れたリーダーの条件の一つになっている。言葉の意味合いそのものがまったく逆転するほど、変化の激しい時代に突入しています」
コンビニエンスストアは最も競争が激しい業界の一つであり、勝ち残っていくためには何が必要か、その経験から出た言葉であろう。
エンジニアにおいても責任ある立場にある人は、変えていいものと変えてはならないものを吟味し、もし変える必要があると思えるときは躊躇せず「朝令暮改」を実施していく勇気が求められるのではないだろうか。
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【プロフィル】和田憲一郎
わだ・けんいちろう 新潟大工卒。1989年三菱自動車入社。主に内装設計を担当し、2005年に新世代電気自動車「i-MiEV(アイ・ミーブ)」プロジェクトマネージャー、EVビジネス本部上級エキスパートなどを歴任。13年3月退社。同年4月に車両の電動化に特化したエレクトリフィケーションコンサルティングを設立し、現職。著書に『成功する新商品開発プロジェクトのすすめ方』(同文舘出版)がある。福井県出身。57歳。