イタリアンレストラン「リストランテアズーリ」の店内。開業でワンランク上の「おもてなし」を目指す=大分県別府市【拡大】
一方、九州新幹線が通っていない土地柄を考慮し、4年前からは博多や熊本などとホテルを結ぶ直行バスプランを導入。高齢者や女性層のハートをがっちりつかんだ。これによって稼働率は90%台に上昇。「99%台」の礎を築いた。リピーターも増え、外国人宿泊客の割合は7~8%まで低下している。
稼働率の好転に伴い、改装や部屋の高級化など戦略的な投資にも力を入れる。9月に開設したイタリアンレストラン「リストランテ アズーリ」もその一環。「予約が取れない店」といわれる人気レストランのオーナーシェフ、落合務氏がプロデュースした。ホテルの運営会社、杉乃井ホテル&リゾートのダイレクトマーケティング部、東健治部長は「ワンランク上のおもてなしが可能になった。温泉旅行の上級者の方々にも来ていただきたい」と語る。今後も飲食ゾーンを中心に積極的に投資し、長期療養型を兼ねたロングステイを希望する層の取り込みを図る。
平成に入った頃、別府と神奈川県箱根町の年間宿泊者数は拮抗(きっこう)していた。四半世紀を経過したいま、別府は100万人もの差をつけられている。杉乃井ホテル&リゾートの佐々木耕一・専務執行役員は「昭和の時代のように、日本一に返り咲く可能性を秘めている」と指摘する。杉乃井ホテルは、その牽引(けんいん)役を担うことになる。(伊藤俊祐)
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【会社概要】杉乃井ホテル
▽本社=大分県別府市観海寺1
▽ホテル開業=1944年
▽施設規模=客室数603室、収容人数2692人