また、大企業と中小企業の社員の「格差是正」も求められている。26年春闘で「1%以上」を要求した金属労協は来年については月額で提示した。「月額の比率にすると賃金水準が高いところは高く、低いところは低くなるが、金額なら格差は改善する」(浅沼弘一事務局長)からだ。
中小企業でつくる「ものづくり産業労働組合」は、ベア月額9千円を賃金改善基準とする方針。中小企業の賃金改善幅が大きくなれば、格差是正に寄与すると期待できる。
■企業はあくまで「賞与」
経団連の榊原定征会長は8日、賃上げについて「経済界は、デフレ脱却、経済の好循環のために積極的に対応する」と述べた。一見、政労使が同じ方向に向いているようにも見えるが、“各論”では必ずしも一致しない。海外企業との厳しい競争を勝ち抜くために能力給の導入を進める企業側は、一律に賃金を上げるベアには消極姿勢。「好業績を反映させるのはあくまで賞与」との考え方も根強い。榊原会長が「ベアありきではない」と強調するのに対し、労組側はデフレ脱却に効果があるとして、ベアの必要性を強調する。
経営環境の先行きに不安があると、企業側はコストの増大につながるベアに踏み切りにくい。労組幹部は「景気が悪い中での交渉は厳しくなる」と警戒する。