旭化成浅野敏雄社長【拡大】
■海外の設備投資を収益に結びつける
--2014年度は売上高が初めて2兆円を超える見込みだ
「想定よりも円安が進み、輸出比率が高い石油化学製品や電子部品・材料などが販売量を伸ばしている。住宅事業は消費税増税による受注額の落ち込みを懸念したが、上期(14年4~9月)で約1割減と想定よりも影響が少なかった。12年に買収した米救命救急医療機器大手ゾール・メディカルの黒字化も大きい」
--15年の経営課題は
「韓国のアクリル繊維原料や、タイの紙おむつ用不織布、シンガポールの合成ゴム材料などの海外工場への設備投資を安定操業や販路拡大で収益に結びつけ、15年度の増収増益を確実にする。また、16年度からの次の中期経営計画につなげるために市場投入段階の製品を仕上げる。例えば、食品や医薬品の殺菌に使う紫外光LED(発光ダイオード)や、ディスプレーをより鮮明にできる新たな透明樹脂だ」
--原油安の影響は
「原油安で石化製品の原料となるナフサ(粗製ガソリン)の価格が下がり、製品価格が安くなれば売上高は減る恐れがある。また、原油安が継続すれば、ガソリン車の販売が増えて電気自動車などの普及が遅れる可能性もある。リチウムイオン電池の(正極と負極を分離する)セパレータを手掛けているので、戦略の見直しにつながるかもしれない」
--経済産業省が昨年11月に石化業界に生産設備の削減に向け事業再編を求める報告書を発表した
「国内からの輸出は価格競争で厳しい状況なので、輸出分の生産能力は削減しなければいけない。国内の需要も自動車産業などが海外生産に移行し、厳しくなるので再編は進む方向だ。だが、各社は水面下で議論しており、最終的に(再編は)企業の自主判断だ。旭化成は水島事業場(岡山県倉敷市)などに生産を集約して競争力のある状態にしたので、コスト削減や品質向上で当面は生き残ることができる」