その理由は明らかで、大半の人間が評論する側に回り、課題に対処するために必要な対策の「試案」を提言する側の人的パワーが不足していることにある。また、これまで成功事例を追いかけ続けてきたホール業界は、「試案」をブラッシュアップするという作業にも不慣れであり、一発逆転、一撃必殺というようなアイデアこそが対策であると思い込んでいる節がある。これでは、現在抱えている困難な課題を乗り越えることは難しい。
とはいえ、ホール業界にはまだまだこの業を末永く続けていきたいという強い願いを持っている人たちも多い。そこで筆者は強く提言したい。ホール業界は今こそ、あらゆる具体的提言を「試案」として生み出すべきだ。筆者が考えるだけでも「定量制営業」「半休日(定休日制度)の復活」「地域社会のコミュニティースペース化」「災害時の避難場所指定」などいくつかのキーワードが浮かんでくる。全国のホール関係者が本気で取り組めば、具体的な「試案」が無数に湧き出てくるはず。後はこれをブラッシュアップするという作業を慎重に行うことで、有効な施策へとつながる。
「試案を作ろう」-これはホール業界の課題克服に向けた具体的提言の“はじめの一歩”である。
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【プロフィル】岸本正一
きしもと・しょういち 1963年生まれ。元SEの経験を生かし、遊技場の集客メカニズムを論理的に整理・研究する傍ら、全国のパチンコホールを対象にコンサルティングを行う。雑誌への連載やテキストの出版、セミナーでの講演なども手掛ける。オベーション代表。