【2015春闘】「経済好循環」定着が焦点

2015.3.19 05:00

 2015年春闘は、好調な業績や慢性的な人手不足を背景に、自動車や大手電機など多くの製造業が過去最高水準のベースアップ(ベア)を決めただけでなく、賃金水準が低い外食や小売りがベアに踏み切ったり、パートや時間給の契約社員に対する待遇改善の動きが広がった。原油安で物価上昇が一服していることもあり、今後、実質賃金はプラスに転じる可能性が高い。幅広い産業で実現した賃上げが消費を押し上げ、アベノミクスが目指す「経済の好循環」が定着するかが今後の焦点だ。

 昨年の春闘は、円安の恩恵を受けて収益が急回復した主要企業で、定期昇給とベアなどをあわせた賃上げ率が13年ぶりに2%を超えた。しかし消費税増税による物価の上昇分を補いきれず、今年1月までの実質賃金指数は19カ月連続でマイナスのままだ。

 今年の労使交渉で経営側が過去最高水準のベアを受け入れたのは、積極的な賃上げに踏み出さなければ経済の好循環が続かないことが鮮明になったためだ。

 日本総合研究所の山田久チーフエコノミストは、今年のベアが昨年の1.5倍程度になったことから、15年度の実質賃金は 0.7%増に転じ、その結果、消費を同水準押し上げ、経済成長率も0.5%前後押し上げられると試算する。「過去10年間は企業業績が賃上げに反映されなかった中で、2年連続の賃上げは評価できる」と話す。

 政府は今年の春闘を受け「夏に向けて実質賃金がプラスになる」(甘利明経済再生担当相)と期待する。だが、賃上げをてこにした経済の好循環を一時的なものとせず、持続的な成長軌道に乗せるには「中長期的な経済成長の青写真を示せるかにかかっている」(山田氏)。経済の好循環を2巡、3巡と積み重ねるためには、政府は日本の稼ぐ力を高める政策を実行することが求められる。

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