【物流イノベーション】日本郵便の挑戦(2-1)

2015.4.22 05:00

日本郵便鶴田信夫執行役員

日本郵便鶴田信夫執行役員【拡大】

  • 「無添加で新鮮さが商品の特徴です」と語るCS向上課の石原由実子課長代理

 ■EC(電子商取引)拡大に向けサービス加速 真心と利便性届けるのが基本

 大量の商品の中から、目当ての品を簡単に探し出せ、時間的な制約なしに買い物ができるインターネット通販が、生活スタイルに溶け込んでいる。売り上げが伸び悩む実店舗に比べEC(電子商取引)の利用額は右肩上がり。2013年に約11兆円だった消費者向けECの市場規模は、20年には約20兆円へ倍増するとの予測もある(経済産業省調査)。ECによる買い物は、利用者に商品が届いて完結する。送り手と受け手の双方がストレスなく、より早く、確実に商品が届かなければ市場の発展を阻害することにもなりかねない。市場の需要増に応えるため日本郵便は、新たな物流イノベーションへの挑戦を開始する。

                  ◇

 ≪EC物流を支える新サービス「スマートレター」≫

 ■各階層のニーズに細やかに対応

 「強い責任感と物流を支える気概をもつ、やる気のある社員たちがいるからこそ日本郵便の事業が運営できる。社員の質の高さは自慢であり誇りだ」と日本郵便の鶴田信夫執行役員は、全国津々浦々にわたる人的資源の豊富さを強調する。顧客の荷物を預かり、確実に配達するのは物流の基本。その上で、きめ細かいサービス対応を相次いで行えるのは、基本を全社員が自覚・共有化しているから。質の高さを標榜する理由が分かる。

 さらに民営化で料金設定やサービスのラインアップに自由度を増したことで、日本郵便は次々と利便性の高い新サービスの導入を開始している。

 大きな商品を扱う「ゆうパック」は、コンビニエンスストアでの受け取り、ゆうパック受取ロッカー「はこぽす」の試行運用による受取利便の向上を図り、発送する側と受け取る側の両者のニーズに応えてきた。一方、小型商品の発送へのニーズに対応して昨年6月から開始したのが「ゆうパケット」。CD、DVD、書籍などが送れるだけでなく郵便受けに配達されるサービスなので手軽さが受け、需要は着実に増えている。

 「EC市場の伸びを要因に『ゆうパック』が前年度比14%増と好調だ。手軽さから『ゆうパケット』も順調な滑り出しで、しっかりとEC業界のニーズに応えられている。とくに郵便受けに配達するサービスは、われわれの得意分野だ」(鶴田執行役員)という。

 一方、カタログやダイレクトメール(DM)などを扱う「ゆうメール」は、業界そのものがネット通販に押されていることもあり、横ばいの状態となっている。このことから日本郵便の取り扱いサービスは、世代交代したともいえる。言い換えれば、物流の潮流を捉え、顧客が望むニーズを的確にとらえた新サービス展開を行っているともいえるだろう。

 こうして新たに登場したのが「スマートレター」だ。従来の「レターパック」と同じように専用封筒を購入する方式。厚さ2センチ、重さ1キロまでの荷物を180円の料金で全国どこへでも送れる封筒型郵便新サービス。信書の送付もできる。郵便局やコンビニエンスストアなどで購入し、ポストに投函できる手軽さだ。4月3日から東京都内で販売を始め、地域を順次に拡大していくという。

 「手軽さと低料金でEC業者だけでなく、一般の事業所や消費者のみなさんに広く利用していただけると考えている。書類送付に利便性の高い『レターパック』など既存サービスの認知度アップにもつながることを期待している」(鶴田執行役員)と、封筒型郵便サービスが見直される起爆剤にもなるという。

 日本経済の拡大基調に合わせ、物流需要は間違いなく増大する。日本郵便は、より利便性の高いサービス展開を通し、EC事業者、消費者のほか、地域経済の支援役としての機能も併せ持つ。与えられた役割は大きい。

                  ◇

 ■封筒型郵便新サービスの比較

 【新サービス】スマートレター

 ・大きさ 25×17センチ(A5ファイルサイズ)レターパックの約半分

 ・厚さ 2センチまで

 ・重量 1キロまで

 ・料金 180円(税込み)

 ・差出方法 専用封筒に納入して差し出す

 ・差出場所 全国の郵便窓口・ポスト

 ・追跡サービス なし

 【参考】レターパックライト

 ・大きさ 34×24.8センチ(A4ファイルサイズ)

 ・厚さ 3センチまで

 ・重量 4キロまで

 ・料金 360円(税込み)

 ・差出方法 専用封筒に納入して差し出す

 ・差出場所 全国の郵便窓口・ポスト ※一部のポストは不可

 ・追跡サービス 郵便追跡サービス」の利用可

                  ◇

 <ユーザー事例>

 □長寿の里

 ■柔軟な料金、配送クレーム大幅減を評価

 天然由来の成分のみを使い“無添加”にこだわった化粧品、サプリメント、健康食品などを製造販売する長寿の里。商品コンセプトでもある「然(しかり)」のブランドで主婦層から根強い人気を集めている。洗顔せっけんの「よかせっけん」は認知度も高く、ネーミングから九州の商品であることをアピールしているかのようだ。大手ポータルサイト検索数の洗顔部門で1位をとったこともある売れ筋だ。

 「商品は梱包し配送するが、お客さまが箱を空け商品を取り出すとき、少しでも自然豊かな九州を味わってもらいたいと考え、九州の空気を詰めたパックを緩衝材にしている」とコミュニケーションセンター部CS向上課の石原由実子課長代理は語る。そこにある考え方は、顧客に届けるのは自慢の商品だけでなく、有形無形のすべてのサービスであるということ。だからこそ最終的に顧客が受け取る商品の箱の状態など配送品質にまで神経を注ぐという。

 同社が日本郵便の「ゆうパック」を利用し始めたのは2012年12月から。「配送量は月平均で約8万件ですが12月は10万件近くにまで増えます。量が増えても安心して任せられることを考え日本郵便さんに切り替えました」(石原課長代理)という。配送にはドライバーの対応や箱の破損、汚れなど、ある程度のクレームはつきものだが、仕方ないと済ますわけにはいかない。

 「以前は配送業者に改善を求めてもクレーム件数が減らなかった。ところが日本郵便は、お客さまの声に即応してくれる。なぜ起こったのか管轄の郵便局で原因を調査し、その結果を報告してくれるので納得できる」(石原課長代理)と日本郵便のきめ細かいサービスを評価する。クレーム数は確実に減り、配送に関する顧客満足度を高める効果が出ている。

 同社の顧客層は主に40~60代の女性。定期購入のほか、ネット広告で見て試験的に洗顔せっけんを1つだけという注文も少なくないという。配送に使用する箱は5種類あり、日本郵便と相談しながら箱の大きさなど検討を続けている。料金に関しても相談に乗ってくれるのが魅力でもある。「配送量が増えれば料金も弾力的に対応する」と日本郵便法人営業の担当営業マンは自由度の高さを強調する。

 同社では、20年を目指して大幅な拡販計画を策定中だ。実店舗も全国15店舗あるが、圧倒的にネットでの注文が多く「ゆうパック」での配送が中心となる。配送面では問題なく販売数量を安心して増やしていける、と石原課長代理は話す。

 「商品の消費期限は1年、開封後は3カ月。添加物を一切入れてないので、できたてホヤホヤの新鮮な生ものを届ける。これが当社の商品と配送のこだわり。この考え方を日本郵便さんは理解してくれる。それがうれしい」ともいう。

                  ◇

【会社概要】長寿の里

 ▽会社名=株式会社長寿乃里

 ▽代表者=代表取締役社長・宮田聖士氏

 ▽所在地=横浜市西区みなとみらい3-6-3 MMパークビル12F

 ▽設立=2001年1月

 ▽事業内容=完全無添加による化粧せっけんなど化粧品の製造販売、飲食事業、ニューリゾート事業など

 ▽URL=http://ww.chojyu.com/

産経デジタルサービス

産経アプリスタ

アプリやスマホの情報・レビューが満載。オススメアプリやiPhone・Androidの使いこなし術も楽しめます。

産経オンライン英会話

90%以上の受講生が継続。ISO認証取得で安心品質のマンツーマン英会話が毎日受講できて月5980円!《体験2回無料》

サイクリスト

ツール・ド・フランスから自転車通勤、ロードバイク試乗記まで、サイクリングのあらゆる楽しみを届けます。

ソナエ

自分らしく人生を仕上げる終活情報を提供。お墓のご相談には「産経ソナエ終活センター」が親身に対応します。