九州電力川内原発の再稼働差し止めを認めなかった22日の鹿児島地裁決定。これを受け電力業界では「原発の安全性に関する九電の主張が認められた」(電気事業連合会)など、安(あん)堵(ど)感が広がった。川内原発は早期再稼働が視野に入ったが、運転再開の道筋がついた原発は一部にとどまる。電力各社の経営状況はいぜん厳しい。
鹿児島地裁の判断に対し九電は22日、「安全性は確保されているとの当社の主張が認められた。妥当な決定をいただいた」とのコメントを発表した。
九電は原発停止に伴う火力発電向け燃料費が膨らみ、平成27年3月期は1150億円の最終赤字を見込む。川内原発1、2号機が再稼働すれば、月200億円の収益改善となる見通しで、財務悪化はひとまず避けられる。
ただ、九電の瓜生道明社長は、現行の料金体系について「川内原発と玄海原発(佐賀県)の計4基の稼働が前提条件だ」としている。運転再開が川内のみにとどまれば、九電の経営環境は厳しいままだ。
また、川内原発に続く再稼働の“二番手”として有力視されていた関西電力高浜原発3、4号機(福井県)は、福井地裁が再稼働差し止めを命じる仮処分を下した。東京電力も柏崎刈羽原発(新潟県)の運転差し止め訴訟が新潟地裁で進む。原発停止が長期化すれば、電力会社の値上げは避けられず、家計や企業の負担は強まる。