要するに、米国企業だけでなく、ドル独歩高の弊害が国内自動車産業の収益構造へも悪影響を及ぼし始めているわけである。為替メリットが発生しないという意味ではない。その影響が減衰し、競争力に裏付けされた成長が必要となってくるということだ。
また、円安のため円コストを増やす(=輸出を増やす)動きが出てきたことで、再び円高に転じたときに逆スパイラル的な影響も懸念される。
1ドル=125円の水準か、それ以上の円安が定着すれば、一段の業績向上は可能だ。しかし、ドル円が1円変化することによる営業利益の感応度は、16年3月期に各社が計画する利益に対し1.5%と過去最低レベルに落ち込んだ。想定から10円円安になっても、営業利益の押し上げ効果は15%にとどまる。
この円安が一段のドル高でもたらされるなら、相対的にその他のクロスレートもドル高のデメリットがさまざまな形で顕在化し、ドル円の効果のかなりの部分を相殺しかねない。国内での輸入価格インフレの懸念も再燃するだろう。もはやこの水準では円安の増益方向へのメリットは小さい。
円安が株高につながるという構図が定着しているが、この相場の中で本来ならば円安感応度の高い業種の自動車株がやや人気の圏外にある。市場は高い感応度で、自動車メーカーの経営環境の構造変化を先読みしているのではないか。
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【プロフィル】中西孝樹
なかにし・たかき ナカニシ自動車産業リサーチ代表兼アナリスト 米オレゴン大卒。山一証券、JPモルガン証券などを経て、2013年にナカニシ自動車産業リサーチを設立し代表就任(現職)。著書に「トヨタ対VW」など。