【高論卓説】競合から協調へ 地域創生の鍵に 森岡英樹 (2/2ページ)

2015.6.19 05:00

 自民党の特命委員会が統一地方選の前に限度額引き上げを打ち出そうとしたのは、「選挙のテーマが地方創生であったことから、ゆうちょ銀行とかんぽ生命の限度額を引き上げれば地方経済の活性化に資すると選挙民にアピールできると考えた」(与党関係者)。また、自民党と全国郵便局長会の選挙協力の意味合いもあった。しかし、日本郵政グループは、民間金融機関の反発が強い限度額引き上げや新規業務は封印し、民間金融機関との提携路線を優先したようだ。

 民間金融機関側も「顧客利便性の向上や地域活性化などに資するものであれば、ATMの提携や地域ファンドへの共同出資といったゆうちょ銀行との協調について前向きに検討していく」(第二地銀幹部)という声が聞かれる。

 巨大なゆうちょ銀やかんぽ生命保険が株式を上場し、いわば市場に溶け込む中にあって、民間金融機関と競合するだけの存在では国民経済的に見て損失が大きい。とくに疲弊する地方経済において、日本郵政グループと民間金融機関はともに地域創生という観点から手を結ぶ意味は深い。かつて郵便局が集めた資金が大蔵省理財局を通じて財政投融資として政府系金融機関に貸し出されていた構図と重なる。

 いわば郵便局の連携先が政府金融機関から民間金融機関に代わるようなものである。その組み合わせは、地銀、第二地銀を巻き込んだ地域金融機関の再編にも影響をおよぼそう。

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【プロフィル】森岡英樹

 もりおか・ひでき ジャーナリスト 早大卒。経済紙記者、米国のコンサルタント会社アドバイザー、埼玉県芸術文化振興財団常務理事を経て2004年に独立。57歳。福岡県出身。

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