「清里の父」と呼ばれるポール・ラッシュ氏の蔵書から見つかったピーター・F・ドラッカー氏のメッセージとサイン。ドラッカー氏はたびたび来日した=山梨県北杜市【拡大】
◆ヒントは身近に
今回の訪問を通して思ったことは、マネジメントの基本は自らの精神をどう高めていくかであり、そのヒントとなるのは外ではなく、意外にもわれわれの近いところにもあるかもしれないということだ。心のよりどころはいろいろなところにあろうが、偉大な人は、自ら求めていた考えに出合うために時間・空間・国境を越えて学ぶ。われわれは身近にいながら、常に外に目を向けるばかりで、感覚的にも鈍く、その良さにも気づいていない。また、新しい考え方を追いかけるばかりでないことも教えてくれる。
「人は自分が見たいと思う現実しか見えない」とはユリウス・カエサル氏の言葉であるが、自らアンテナを高くしないと、見たいものも見えないのかもしれない。マネジメントとは人を扱うものだけに、答えが常に外にあるとも限らない。
ドラッカー氏が他界して今年でちょうど10年。未来への遺言と思われる水墨画コレクション展を通じて、『脚下照顧』という言葉が頭に浮かんだ。
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【プロフィル】和田憲一郎
わだ・けんいちろう 新潟大工卒。1989年三菱自動車入社。主に内装設計を担当し、2005年に新世代電気自動車「i-MiEV(アイ・ミーブ)」プロジェクトマネージャーなどを歴任。13年3月退社。その後、15年6月に日本電動化研究所を設立し、現職。著者に『成功する新商品開発プロジェクトのすすめ方』(同文舘出版)がある。59歳。福井県出身。