メルシャンは10年8月発売のワインで初めてこのボトルを採用。現在、国産ワインの6割強でペットボトルを採用しており、今後は7割まで高めたい考えだ。品質の良さもあり、清酒最大手の白鶴酒造などもハイバリアPETを採用し始めている。
一方、三菱樹脂の成功を受け、東洋製罐や吉野工業といった競合も同様のボトルを開発し、競争は激しさを増している。「おかげで自分たちの技術が向上し、他国が追いつけないところまで進んでいる」。鮫島氏は、国内メーカー同士の切磋琢磨(せっさたくま)を歓迎し、さらなる性能向上に意欲を示した。
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産業界における素材メーカーの存在感が高まっている。日本のお家芸とされてきた電機業界が不振にあえいでいるせいもあるが、世界に先駆けて先端素材を生み出してきた実力が再評価されている。米倉弘昌前経団連会長(住友化学)、榊原定征現会長(東レ)、小林喜光経済同友会代表幹事(三菱ケミカルホールディングス)と、立て続けに経済団体のトップを輩出していることも業界の地位向上を最も端的に示す。激しいグローバル競争の中、少しでも製品の価値を高め、新たな用途を開拓しようと奮闘する開発現場の最前線を取材した。(井田通人)