□地域防災支援協会 理事・梶秀樹
企業が自然災害、大火災、テロ攻撃などの緊急事態に遭遇した場合に、事業資産の損害を最小限に食い止め、中核となる事業の早期再開と継続を可能とするためのBCP(事業継続計画)が、企業に浸透してきた。それと同時にBCPにCSR(企業の社会的責任)の視点を加え、企業防災を利益に結びつけることが課題となっている。
BCPの考え方は、企業の危機管理対策の一環として、コンピューターが誤作動を起こす可能性があるとされた2000年問題を契機に提唱され、防災分野に広がった。それまで防災に力を注ぐ企業は珍しく、災害による社会の被害を軽減するために、いかに企業の力を活用できるかは、防災関係者の大きな課題だった。1997年に米国カリフォルニア州のパサデナで開かれた日米都市防災会議では、中心的テーマの一つとなった。
その会議に出席していた私は席上、85年に完工したホンダ青山ビル(東京都港区)の話を披露した。「1階は一般に開放したスペースで、災害時に避難者を受け入れるために考えられた。地下には1万人分の食料と水の蓄えがある。各階は窓ガラスが地上に降り注がないようバルコニーで囲まれている。さらに、交差点の見通しを妨げないよう建物を道路境界から数メートル引っ込めて建てている」-などである。「ホンダは人さまの命を預かる製品をつくっている会社だから、安全を第一に考えなければならない」という創業者、本田宗一郎氏の考えによるものといわれる。
地価の高い東京都心の一等地でこれだけのことをすれば膨大な投資になり、ホンダの利潤に結び付いているとは言い難い。一方で、ホンダがいかに安全を考えて車をつくっているかを、消費者に訴えるメッセージになっていることは間違いない。米国の学者からは、「広告費」と考えたのだろうとか、トップの意志による特別な例だといった意見が出された。