会員企業に賃上げを呼び掛けた「官民対話」終了後、記者の質問に答える経団連の榊原定征会長=26日、首相官邸【拡大】
政府は26日、閣僚や企業トップが集まる「官民対話」の第3回会合を開いた。経団連の榊原定征会長が出席し、安倍晋三首相の要請に応じる形で、2016年春闘での賃上げを会員企業に呼び掛ける方針を正式に表明した。
安倍首相は「産業界からの積極的な方針を評価したい。しっかり実行していただきたい」と述べた。安倍政権が掲げる名目国内総生産(GDP)600兆円目標の実現には、3%超の高い賃上げ率が必要とされる。榊原会長は会合後、記者団に「3%を意識しながら、今年を上回る水準を期待すると呼び掛けたい」と語った。
政府は主要企業に3年連続のベースアップ(ベア)の実施で国内消費を喚起したい考え。これに対し、経団連はベアを容認する方向だ。
経団連は、1月に公表する経営側の春闘方針となる「経営労働政策委員会報告」に「業績が向上した企業は(政府の名目成長率目標の)3%を視野に15年を上回る水準の賃上げを期待する」と盛り込む。
中国経済の減速などで経営環境が悪化する企業もある中で、安倍政権が主導する「官製春闘」を警戒する声もある。
官民対話では、企業が求める法人税の実効税率の引き下げなど環境整備に対し、政府がどこまで具体的な対策を打ち出すかも注目されている。経団連は法人税減税や規制改革が進んだ場合、企業の設備投資が3年後に10兆円増えるとの見通しも提示した。