バブル崩壊後に経営危機に陥った日産自動車の社長として、フランス自動車大手ルノーとの資本提携交渉をまとめ、再建への道筋をつけた。
現社長のカルロス・ゴーン氏は「ルノー・日産アライアンス(提携)の土台を支える中心的な役割を果たされた」としのんだ。
人事や企画部門を中心に歩み、米国では初の現地工場の立ち上げに携わった。社内では早くから社長候補と目されていたという。
だが、社長になって直面したのは、日産をどう生き残らせるかだった。ドイツのダイムラー・ベンツや米フォード・モーターなども候補に浮上する中、ルノーのルイ・シュバイツァー会長(当時)と直接語り合って信頼関係を築き、同社との提携を決断した。
最高執行責任者としてルノーから派遣されたゴーン氏を全面的にサポートし、大規模リストラの実行を後押し。この結果、日産はV字回復を成し遂げた。
後に、「日産はグローバル化すべきだし、精神的な改革も必要だと考えていた。それをゴーンさんが見事にやってくれた」と振り返っている。
今年に入り、日産の経営にフランス政府が筆頭株主になっているルノーを通じて関与する懸念が浮上した。本人も最近まで「メディアの取材に元気に持論を述べていた」(日産幹部)という。
日産、ルノー、フランス政府が日産の独立性や両社の対等な関係の維持で合意したのは今月11日。見届けたかのように、その1週間後の18日に亡くなった。(田村龍彦)