ニューヨーク世界博でコンパニオンをしながら、出会った友人らとのひととき=1964年【拡大】
■米国の女性社長との運命の出会い
ニューヨークの電話帳で見つけた会社「テレホン・アンサリング・サービス(TAS)」に電話をしてみると、応対に出た女性が親切に教えてくれるものの、ビジネスの仕組みも何も分からない。根掘り葉掘り聞くと、「そんなに興味があるなら、会社に見学にいらっしゃい」と誘ってくれて、休日にマンハッタンのエンパイア・ステート・ビルディングにあったその会社を訪問しました。
◆カルチャーショック
ドアを開けた瞬間、中から爆風のような音が弾け飛びました。ヘッドホンを付けた何百人ものオペレーターが電話に向かって一斉に話していたのでした。電話で親切に応対してくれた女性が迎えてくれたのですが、なんとその美しい女性が社長だったのです。「女性社長!?」。カルチャーショックでした。女性が先頭になって会社を動かしている世界がある、と知り心底、驚きました。
私が就職の道が閉ざされ、アルバイトで生計を立てて、起業を夢みていることなどを話したら、彼女はこう語りかけてくれました。「あなたが今、経験していることは私がアメリカでチャレンジしてきたことなのよ。あなたは昨日までの私。その閉ざされた氷を誰が割るの? あなたがアイスブレーカーになりなさい。頑張れば、きっと夢がかなう日が来るわ。やらなければ明日はないのよ」と。
運命的な出会いと心に刺さるエキサイティングな言葉でした。体が熱く震え、涙があふれそうになりました。この出会いが私の一つの原点です。起業家マインドも、そしてビジネスのヒントも。TASは電話応対による会員制秘書サービスやカタログショッピングをしていました。企業や個人と契約して、電話を介して外部からの連絡やアポイント調整などを代行したり、百貨店のカタログを見た消費者の注文を電話で受けたりするサービスです。