「ハンバーガーですか? 私は食べませんよ。人間は子供の頃においしいと感じたものを大人になっても食べるものです」。日本マクドナルドの創業者である、藤田田氏にインタビューした際に印象に残った言葉である。「子供たちに食べてもらえれば、大人になっても食べるようになります。いずれ日本人は米国人のように背丈が大きく、金髪になりますよ」と、お得意のジョークである。
「ユダヤの商法」は藤田氏が、日本第1号店を銀座三越に開店して大ブームを起こした、1971年に書いた。95の原則を掲げたうえで、「女と口を狙え」と説く。アクセサリーとハンドバッグの輸入商として「第1のユダヤの商法」を成功させた藤田氏は、ハンバーガーを「第2のユダヤ商法」の応用と位置付けた。
「スタバ」の地域に溶け込む店づくりは、シアトルから駒沢に続いている。「マック」は、デフレ経済のなかで低価格路線によって、ビジネスパーソン層を捉えた。その後の経営不振は異物混入事件のせいばかりではないだろう。東京の下町の「マック」に入った。小さな袋をプレートに載せられた。開封すると、そこにはスーパーマリオの小さな人形が。藤田氏の決断の大きな要因である、子供を思い出したようだ。
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【プロフィル】田部康喜
たべ・こうき 東日本国際大学客員教授、シンクタンク代表 東北大卒。ソフトバンク広報室長などを経て現職。61歳。