【高論卓説】自動車産業、経営は“転換期” (2/3ページ)

2016.2.12 05:00

 現時点で問題が発生していない乾燥剤付き硝酸アンモニウム製インフレーターにリスクが波及するなら、さらに問題の出口は遠ざかることになる。

 人件費、減価償却費、研究開発費などを含む構造的な固定費が増勢を続けていることは、最も懸念すべき要素だ。

 弊社の集計によると、トヨタ、ホンダ、日産の大手3社の総固定費は、07年度に12兆3000億円でピークを付けた。その直後にリーマン・ショックで世界は経済危機に陥り、自動車メーカーもかつてない経営不振に陥った。

 それからの各社の経営努力が結実し、11年度には総固定費が2割圧縮されて10兆円に減少。アベノミクスを受けた円高是正と先進国経済回復にも恵まれ、劇的な収益改善を果たした。

 現在は、人件費を中心に固定費は再び増加傾向で、15年度の推計で過去最高となる13兆3000億円に肥大化する見通しだ。中期的に人件費、減価償却費とも構造的な増加が避けられない情勢で、自動車産業は外部経済環境の変調に対し、非常に脆弱(ぜいじゃく)であることを認識しなければならない。

 乗用車8社合計の14年度の営業利益は5兆624億円。今期の計画では5兆3950億円と、営業利益率は7.9%にも達する。この水準は欧州や韓国メーカーを突き放して世界トップだ。しかし、これは出来過ぎの追い風を受けた結果と厳しく捉えるべきだ。

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