【クールジャパンの匠たち】感性に訴える超高密度生地を開発 (2/2ページ)

2016.2.20 05:00

最先端の技術を職人的なものづくりと融合させ、高機能で感性に訴える製品を生み出していく

最先端の技術を職人的なものづくりと融合させ、高機能で感性に訴える製品を生み出していく【拡大】

  • 高密度織物の限界を超えた製品を次々と開発し、世界のトップブランドを魅了する

 「海外に可能性を求めました。いくつも仲介を経ては高価格になります。もとより商社の多くは繊維部門が撤退し、自分の足で出向いていくしかありません。耳にしていたのは、韓国とイタリアなら買い手がいるかもしれないという頼りなげな話だけ。アジア通貨危機の直後にもかかわらず、どこでどうして会ったか分からない韓国人の名刺をたった一つの手掛かりに出かけました」

 雨傘の3倍もの撥水性を備え、張りと腰があり、仕立て映えのする美しい生地が注目を集めた。服地としての用途を想定しきれていなかった新しい製品は、欧米のハイブランドをはじめとする感性の高い作り手の創作意欲を刺激した。新しい市場が新たな需要を生み、伸縮性のある高密度織物という誰もなしえなかった関門も突破。一振りすれば乾いたようになるレインコート、やわらかな着心地の極薄生地を使ったダウンコートを可能にした。色鮮やかなナイロン生地を世に問い、シルクのような風合いで魅了する。

 「合繊織物に高い価値を置くことなど考えもされませんでした。一流ブランドの門前には、さまざまな製品、アイテムを持った人が列をなし、1シーズンに1度、話ができるかどうか。彼らが驚き、欲しい、使ってみたいと身を乗り出すような製品をと一切の妥協なく実践してきました」

 中途半端なものは、すぐ消えてしまう。本物はコピーをすることができない。厳しい要求を貫徹させる世界の一流と経験を重ねて、透徹したものづくりは磨きがかかる。

 「自分たちでしかできないものをつくり、それを使いたいと思う人と会うことを続けてきました。ものづくりは人づくり。人が変われば組織も変わり、ものづくりも変わります。若い世代へと受け渡しながら日本のものづくりを続けたい。継続するためには産地が必要です。糸を撚(よ)り、色を染めるなど、いくつもの担い手がいて初めて織物ができます。機織りも1社では成立しません。手を携え、日本でしかできないものづくりに役目を果たしていきたいと思います」(谷口康雄)

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【プロフィル】吉岡隆治

 よしおか・りゅうじ 1951年、福井市生まれ。大阪市の繊維企業で経験を重ね、79年に第一織物へ入社。創業者の父を継いで82年から代表取締役社長を務め、自社で生地の企画製造、販売に乗り出す。ヨットやウインドサーフィン、パラグライダー用のクロス製造で培った高密度織物の概念を衣料の世界に持ち込み、欧米のハイブランドなどから高い評価を集めるグローバル企業へと成長させた。総合受託(ODM)や自社ブランドの開発を推進する一方、同業他社との水平共同開発をはじめとする産地の活性化、若手デザイナーの育成にも努め、昨年の毎日ファッション大賞特別賞を受けた。

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