味の素は、血液中のアミノ酸濃度バランスの変化を調べ、がんにかかっているリスクを評価する「アミノインデックスがんリスクスクリーニング」(AICS)検査を、2011年4月から全国の医療機関に提供している。
5ミリリットルの血液を採取するだけで手軽に検査でき、約1000の医療機関が人間ドックのオプションなどとして導入。延べ10万人が利用した。
血液中の約20種類のアミノ酸は、健康な人はほぼ同じバランスになっているが、がんなどの病気になると特有の変化が起きる。これに注目し、長年培ったアミノ酸に関する技術を医療分野に生かそうと開発に着手。医療検査のエスアールエル(東京)と提携し、医療機関からがん患者と健康な人の血液サンプル約2万人分を収集し、アミノ酸バランスを分析した。
結果を基に、がんのリスクを評価するためのアミノ酸バランスの計算式を、がんの種類ごとに確定。A、B、Cの3段階でリスクを表示する。対象は、胃、肺、大腸、膵臓(すいぞう)の4種のがんに、男性は前立腺を加えた5種。女性は乳、子宮・卵巣を加えた6種。
アミノ酸の変化はがん細胞が小さくても起きるとされ、「早期のがんにかかっているリスクを調べるのに有効」とアミノサイエンス事業本部ウェルネス事業部の小倉康彦さんは強調する。
AICSを取り入れている春日クリニック(東京都文京区)などを運営する医療法人社団同友会理事長の高谷典秀医師は「大腸がんのリスクが最も高いCとされた患者さんを精密検査し、早期のがんが見つかり、内視鏡で切除できたケースもある」と評価。
ただ、AICSはがんであるかどうかを確定する検査ではない。高谷医師は「一般的ながん検診を受けた上で、プラスアルファで組み合わせることが早期発見に重要だ」と話す。