東電、機動力で勝負 4月から持ち株会社制、電力小売り全面自由化にらむ 脱国有化、まず社債発行

2016.3.28 21:54

 電力小売りの全面自由化に合わせ、東京電力は4月1日、大手電力で初めて持ち株会社制に移行する。自由化で競争の激化が予想される中、発電、送配電、小売りの各事業を分社化して機動的に動けるようにすることで収益力を高める。業績は燃料費の減少で黒字化しているが、収益のカギを握る柏崎刈羽原発(新潟県)の再稼働の見通しは依然立っていない。「脱国有化」に向けた経営改革は正念場を迎える。(佐藤克史)

 「新たにホールディングカンパニー制に移行するが、取り組まなければならないことは多い」

 東日本大震災から5年が経過した今月11日、東電の広瀬直己社長は震災直後に事故を起こした福島第1原発で訓示。福島の復興に全力を挙げることを改めて誓うとともに持ち株会社制への移行にも触れ、社内の引き締めを図った。

 移行後の新体制では、福島第1原発の廃炉や原発事業も担う持ち株会社「東京電力ホールディングス」の傘下に、発電会社、送配電会社、小売り会社を置く。各社が独自に経営戦略を策定して資金を調達し、独立採算で事業を進める。意思決定の速さを生かし、業務提携などで競合他社との差別化を目指す。

 小売り会社は安い電気なら東電グループ外からでも調達し、発電会社は高く買ってもらえるのならば新規参入の新電力にも売り込む。互いが競争力を高めて全体を底上げするのが狙いだ。

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 「燃料費の反転が怖い。今と真逆のことが起きる」。ある東電役員は原油安という外的要因頼みの決算をこう警戒する。

 平成27年4~12月期の連結経常利益は4362億円と同期としては過去最高を更新。28年3月期を含め3年連続の年間黒字はほぼ達成が確実な状況だ。ただ、27年4~12月期の燃料費は前年同期と比べ4割近くも減っており、原油安の恩恵がなくなれば、業績は一転して悪化する恐れがある。

 柏崎刈羽原発の再稼働は1基で年1千億円前後の収支改善効果を持つが、福島第1原発と同じ沸騰水型軽水炉(BWR)で再稼働は見通せない状況が続く。リストラも年を追うごとに効果が限定的になってきているという。

 4月に始まる全面自由化は、電力需要の伸びが見込める巨大市場の首都圏が主戦場だ。新電力の多くが首都圏になだれ込み、東電が一定の顧客を奪われることは避けられない。

 さらに、東電が原発事故で個人や法人に支払った賠償金は約6兆円に上るが、今後少なくとも7兆6千億円に膨らむ見通し。約1兆円引き当てている廃炉費用は、追加で1兆円ほど必要になると見込む。

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 東電は原発事故で5%台に落ち込んだ自己資本比率を27年4~12月期に17・5%まで回復させた。分社化による経営の効率化で、生まれた利益を賠償などの原資に充てることができれば、28年度中を目指す6年ぶりの社債発行への道が開ける可能性がある。社債による自力での資金調達は自主経営を取り戻す大きな一歩だ。

 1兆円を出資して東電を実質国有化した政府の原子力損害賠償・廃炉等支援機構が来年3月末に行う経営評価にも影響を及ぼす。

 再建が軌道に乗っていると判断されれば、現在50%超の議決権比率の引き下げや国から派遣中の職員の引き揚げなどが決まり、脱国有化に進む。持ち株会社制への移行による収益強化の取り組みは待ったなしの状況だ。

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