技術フロンティアは広い。デジタル革命分野のほか、新エネルギー、次世代自動車、再生医療、介護ロボット、バイオニクスなど日本が先頭に立てるものが多いが、問題はいかにこれを実現するかである。産学連携と異分野の技術融合の必要性が言われ始めて30年以上がたつが、遅々として進まない。
第3は、企業経営のイノベーションである。日本の企業経営を見ると、最近徐々に国境を越えた提携合併がみられるようになったが、欧米に比べると、まだまだその戦略性は低い。コーポレート・ガバナンス改革が提案されているが、その成果は道半ばである。とりわけサービス産業の生産性は低い。デジタル革命についていけるか、経営者の真価が問われている。
◆グローバリズムは不可欠
第4は、社会生活のイノベーションである。人口が減少する日本が経済の量的拡大よりも社会の質的向上を目指すとすれば、人類が希求する健康、美、文化、倫理、秩序、創造など人間の価値の高揚に重点を置かなければならない。とりわけ、伝統的文化の保存、新しい文化の創造など文化的基盤の充実を図るとともに、イノベーションを起こす源泉となる教育に関し、学際教育の強化、創造力の養成、コミュニケーション力の向上、海外留学の促進などを進める必要がある。
第5は、国際システムのイノベーションである。最近、政治、経済、社会の各面でリスクが高まり、グローバル・ガバナンスが揺らいでいる。市場、資源、食糧などを海外に依存し、集団安全保障体制に頼る日本としては、グローバリズムの定着が不可欠である。