2015年度に上場企業が実施した自社株買いの総額が初めて5兆円を超え、8年ぶりに過去最高を更新したことが、野村証券の集計で分かった。15年度の配当総額も初めて10兆円を超える見通し。株主重視の経営を促す企業統治指針の導入などを受け、株主還元への意識が高まったことが背景にある。
集計によると、15年度の自社株買いの総額は前年度から58%増えて5兆3000億円になった。実施額が最も大きかったのは7809億円のトヨタ自動車で、日本郵政(7310億円)、スズキ(4605億円)が続いた。
配当総額は15%増の10兆9000億円となり、3年連続で過去最高を更新する見通し。
自社株買いによって市場に出回る株数が減ると、投資家が保有する株式の1株当たり利益を増やす効果があり、株価上昇につながりやすいとされる。自社株買いと、企業が稼いだ利益の株主への分け前である配当を合計した株主還元の総額は、16年度に17兆1000億円と予想。3年連続で過去最高を更新する見通しだ。
野村証券の西山賢吾シニアストラテジストは「自社の株価が割安と考える企業が積極的に自社株買いを実施した」と指摘。日銀のマイナス金利政策による預金金利の低下などを受けて、配当収入への関心が高まっていることが企業による増配の動きを後押しするとみている。