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--「熱中アラーム」の開発背景や現在の業務内容は
望月 2014年に一般家庭向けとして「熱中アラーム TT-560」を開発しましたが、実際に多く使われていたのは建設現場などでした。そこで、新たに業務用熱中アラームの企画を行うにあたり、企画担当者として顧客ターゲットや熱中症に対する要望、販路獲得に向けた調査など行い、昨年、日本体育協会の指標に基づいた学校・スポーツ関係者向けの「TT-561」と、建設や工場の現場向けの「TT-562」を商品化しました。この2つのモデルとも黒球温度計を搭載し、気温、湿度、黒球温度(輻射熱)の3要素からなる暑熱指数「WBGT」で熱中症発症の危険度を知らせるのが特徴です。しかし、WBGTという指標が一般にあまり知られていません。この指標をもっと認知させるため、環境省や農林水産省、東京消防庁などと情報交換も行いました。
芹田 「561」は学校向けですが、最近、子供たちの熱中症発症が多いことを受けて、教育関係に訴求することでWBGTをもっと認知したいと考えて開発しました。熱中症発症の危険度が本体表示のレベルバーによって一目でわかり、また注意レベルに応じてアラームも鳴るので使いやすいのが特徴です。三脚に設置できるアタッチメントが付属品としてあり、服装によって携帯するのが難しい環境下でも使えるのがポイントです。
坂田 私は営業担当として、業務用としての機能的メリットなどを説明しながら、企業や学校関係への販売促進を行っています。
--商品化で苦労した点は
望月 業務用の熱中症指数計の商品企画は初めてでしたので、どこから手をつけていいのかは悩みましたね。直径3.3センチの黒球温度計で計測したWBGT値を、業務用の標準サイズである直径15センチの黒球温度計での計測値に換算しなくてはいけないので、その換算式をつくるのにも苦労しました。
芹田 三脚のアタッチメントをつけるにあたり、輻射熱に影響されないかなどを調べるのに苦労しました。また、開発時期が冬だったので夏の気候環境をつくるのが難しく、社外の試験場などを使って、温度や湿度などがコントロールができる社外の試験場でモニタリングしたことは大変でした。
坂田 黒球温度計やWBGTを理解してもらわないと、商品自体の価値も理解してもらえないのでそれには苦労しましたね。
--どんなところにやりがいを感じますか
望月 直径が3.3センチのコンパクトな黒球温度計を搭載した商品は市場になかったので、発売できたときは感慨がわいてきました。小さくして携帯を可能にしたことが、好評を得た一因でもあります。工場などではWBGTへの理解が進んでいますが、直径が15センチの黒球式だとサイズが大きくて価格も高く、工場のどこか1カ所にしか置けないという難点がありましたが、コンパクトで価格も安ければ複数利用できるので重宝がられています。
芹田 当社には温度と湿度を管理する温湿度計という商品がありますが、今回の商品開発を通じて新しいノウハウが構築できました。今後、さらに利便性を高めた商品開発にも生かせると思います。
坂田 WBGT値を計測して熱中症発症の危険度を見える化することができるため、早期に熱中症対策をとることができます。これにより熱中症患者が一人でも減ってくれればよいと思っています。
--今後取り組んでみたいテーマや将来の目標は
望月 弊社は体組成計が主力商品で、今回の商品を含めたセンサー関連の事業規模はまだ小さいです。ユニークな商品の開発・販売で、事業拡大を図っていきたいです。また、現在所属しているのがライフソリューション事業部なので、単体の商品というよりもユーザーのベネフィットを考えたアプリケーションやソリューションの提供もしていきたいです。熱中症に関しては関連教育や商品の提供によって、熱中症患者を限りなくゼロに近づけたいです。
芹田 今回の開発を通して、人の危険を取り除ける仕事に対して大きな使命感を持ちましたので、今後も社会的に意義のある商品開発に携わっていきたいです。また、熱中症患者の多くは高齢者ですが、その高齢者が元気に生活していくための商品開発も手掛けてみたいです。
坂田 今回の商品に関連して、熱中症予防の手助けができればと考えています。また、私が所属している部署ではこのほかにも、アルコール検知器など、業務用の商品を取り扱っています。こうした商品が世の中に広がることで、社会の危険回避に貢献できればと思っています。
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■黒球式熱中症指数計「熱中アラーム TT-561」
熱中症発症の注意レベルをアラーム音と数値で知らせる携帯型の熱中症対策機器。「運動は原則中止」「厳重警戒」「警戒」「注意」「ほぼ安全」の5段階・11レベルで熱中症の危険度に応じて異なる警告アラーム(音量は「大」「小」「なし」の3段階)で告知する。
日射・輻射熱を計測できる黒球温度計を搭載しているため、炎天下でも正確なWBGT値(暑さ指数)の計測が可能で、屋内はもちろん直射日光下の屋外でも使用できるのが特徴。
タニタは2014年に国内初となる家庭用の携帯型黒球式熱中症機器を発売、シリーズモデルを展開しているが、「TT-561」は一部販売店のみの取り扱いで、価格はオープン。
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【会社概要】タニタ
◇本社=東京都板橋区前野町1-14-2
◇社長=谷田千里氏
◇設立=1944年1月
◇資本金=5100万円
◇事業内容=家庭用・業務用健康計量・計測機器の製造・販売
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フジサンケイビジネスアイは「独創性を拓く 先端技術大賞表彰制度」を設けております。このシリーズは2015年の運営に協力いただきました協賛企業の研究開発活動を紹介するものです。