【21世紀を拓く 知の創造者たち】キヤノン ネットワークカメラ

2016.6.15 05:00

藤井孝史さん

藤井孝史さん【拡大】

  • 蓬澤信哉さん
  • 大内栄治さん
  • 木村友紀さん

 □キヤノン ネットワークカメラ「VB-M50B」開発

 ■遠距離・夜間監視でもカラーで

 カメラやビデオなどの映像機器をはじめ、プリンター、複合機などの事務機器を主体に成長を遂げてきたキヤノン。「人間尊重」「技術優先」「進取の気性」という創業以来の企業DNAをしっかりと受け継ぎながら社会に対して常に新しい提案を行っており、今春には遠距離からの夜間監視でもカラー撮影が可能なネットワークカメラ「VB-M50B」を市場投入した。そこで、同カメラ開発に携わった技術者に仕事のやりがいや今後の目標などを聞いた。

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 《NVS事業推進本部》

  □藤井孝史さん 市場にマッチ実感

  ◇ふじい・たかし   NVS開発センター所長

  □蓬澤信哉さん 映像に新しい価値

  ◇よもぎざわ・しんや NVS事業統括センター主席

  □大内栄治さん 犯罪減少に貢献を

  ◇おおうち・えいじ  NVS開発センター主幹

 《イメージコミュニケーション事業本部》

  □木村友紀さん 死角のない映像に

  ◇きむら・とものり  ICP第一開発センター室長

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 --今回の製品での担当業務は

 蓬澤 商品の企画を担当しました。技術やコンセプトだけでなく、ターゲットとするユーザーや使い方の想定なども調査しました。また、市場導入にあたって、価格設定や数量、発売のタイミング、類似・競合商品に対しての優位性検討などを行いました。

 藤井 プロジェクトの統括です。統括として大きな役割の一つが、開発チームの編成です。今回は、光学技術や画像処理技術、メカトロニクスなどを中心に新しい技術を多く入れ込んでおり、技術の幅広い知識をもっていてフットワークの軽いメンバーで編成しました。

 大内 プロジェクトのチームリーダーとして、メカトロニクスや光学、電気、ソフトウエアやアプリケーションなど、各部門から参加した設計者をまとめ、商品企画からの仕様提案を技術的なアプローチで具現化していくことです。設計だけではなく、企画や品質評価、工場の生産部門などと連携しながら、製品全体を立ち上げていく役割です。

 木村 レンズ設計を担当しました。今回の製品に関しては商品企画の段階から参加し、これまで蓄積してきたコア技術をもとに焦点距離やレンズの大きさなどについて多くのパターンを提示して、最適仕様を考えました。

 --今回の開発も含めて、どんなことに仕事のやりがいを感じますか

 藤井 狙った通りの評価を顧客から受けたときですね。商品企画だけでなく、設計も市場にしっかりとマッチしているということが実感できたことは一番うれしいです。

 大内 このサイズで超高感度、超望遠というネットワークカメラは当社でも初めてのジャンルなので、わくわくしながら仕事に取り組めました。高感度だけでなく、パン(横方向の回転)やチルト(縦方向の動作)の停止精度向上や駆動の高速化など機能を確立していくプロセスも楽しく、仕事に対する向上心やモチベーションアップにもつながりました。

 木村 今までにないレンズタイプにより、明るい超望遠レンズで課題となる色収差がうまく補正できたことは興味深くうれしかったです。光学設計は何十種類のガラスとレンズ曲率の組み合わせの膨大なパターンから、製品に合う答えを見つけ出すことは大変ですが面白いです。

 蓬澤 顧客からのニーズを設計部門にフィードバックする中、当初予定よりも高性能な製品の開発が実現可能と知ったときにはうれしかったです。企画段階で考えてもいなかったことが機能として付加されるなど、開発に関わった人たちが知恵を出してくれて発売前から好評だったことはすごく楽しかったです。

 --全く新しい製品の開発ということで苦労もあったと思いますが

 藤井 開発中さまざまなトラブルはありましたが、全体としては特に苦労したという印象はなく、私の手を特別に煩わすことはなかったです。

 大内 カメラの横方向の回転に対しての耐久性基準をなかなかクリアできなかったことです。担当者が原点に立ち戻って材料と形状の見直しを行った結果、目標を十二分に達成でき、改善予測に結果が付いてきて課題を解決できたことは技術者冥利につきますね。

 木村 光学設計は、コンピューター上でシミュレーションを繰り返しながら最適解を探します。しかし、実際には製造誤差のため性能にばらつきが発生します。この製造誤差に対して性能低下の敏感さを下げる設計に苦労しました。製造現場では製造誤差を職人技によってミクロン単位で修正するのですが、工場の人たちと膝をつきあわせて解決していくのも大変な作業です。

 蓬澤 面白い機能を織り込みたいと思い、可視光を遮断して近赤外光の限られた波長域のみを透過させる「鮮明IRモード」という機能の搭載を提案しました。しかし、これまでにない全く新しい機能だったので、この機能のユーザーメリットを探すのが難しかったですね。

 --今後、取り組んでみたい課題や目標は

 藤井 カメラの映像をお客さまのさまざまな課題解決につなげるソリューションの開発に力を入れていきたいです。ビデオカメラなどは観賞用映像の撮影が中心ですから、顧客に与える価値は画像の美しさです。一方で、ネットワークカメラは、映像の中から犯罪の予兆を発見するなど、情報を切り出して顧客が必要なソリューションに仕上げて提供するということです。顧客とともにソリューションをつくりあげて、事業としての基盤をもっと強固にしていきたいです。

 蓬澤 顧客も気づいていない映像の中の価値を、さまざまなアプリケーションと組み合わせて新しい価値を生み出せる商品の開発に関わっていきたいです。思いもよらないような商品の開発を考えたいです。

 大内 ネットワークカメラは、防犯用では犯人を捕まえるツールとして使われている印象が強いですが、今後は人の行動や顔の変化を予知して未然に犯罪を防ぐような製品も出てくると思われます。そういうカメラの開発を通して、犯罪の減少につながるような社会貢献に寄与していきたいです。

 木村 映像から死角となる影を消すことが究極のネットワークカメラの開発です。レンズとセンサー、映像関連装置などを連動させて、どのような状況でも全てが映るというカメラを開発してみたいですね。

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【会社概要】キヤノン

 ◇本社=東京都大田区下丸子3-30-2

 ◇設立=1937年8月

 ◇代表取締役会長 CEO=御手洗冨士夫氏

 ◇社員数=2万6360人(2015年12月31日現在)

 ◇売上高=3兆8003億円(15年12月期=連結)

 ◇事業内容=複写機・複合機などビジネス向け、デジタルカメラ・プリンターなどの一般消費者向け、半導体露光装置など産業向け電子機器の開発・製造・販売

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 フジサンケイビジネスアイは「独創性を拓く 先端技術大賞表彰制度」を設けております。このシリーズは2015年の運営に協力いただきました協賛企業の研究開発活動を紹介するものです。

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